歯科・口腔外科的手術後の耳鼻咽喉科的合併症に対する内視鏡下鼻内手術の3例

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  • Endoscopic Sinus Surgery for Otolaryngological Complications Associated with Dental and Oral Surgical Treatment : A Report of Three Illustrative Cases

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抄録

口腔インプラント治療における最も重篤な合併症は上顎洞炎である.インプラント治療後に生じた上顎洞炎に対して,歯科・口腔外科領域ではまず抗生物質の投与が行われる.口腔内から上顎洞を開放し洞内を洗浄する歯科・口腔外科医もいないわけではないが,長期にわたって漫然と抗生物質が投与されていることが珍しくない.短期に上顎洞炎が消褪しなければ埋入したインプラントが脱落することもある.口腔インプラント治療によって引き起こされた上顎洞炎に対する手術治療としては,下鼻道側壁に対孔を設置する手術が行われることがある.しかしこの手術は上顎洞の生理を無視した治療法である.上顎洞内の粘液は中鼻道の篩骨漏斗に開いている自然孔を通じて鼻内に排泄される.この自然孔を開大してこの部位に排泄孔を設置するのが最も自然な治療法である.口腔インプラント治療に関連して生じた上顎洞炎の根治的治療として歯科・口腔外科領域でよく行われるCaldwell-Luc手術では上顎洞内の粘膜が全摘される.露出した上顎洞内の骨面には感染した肉芽組織が増生する.この肉芽組織は瘢痕となり,やがて骨組織で置換される.つまり上顎洞腔が消失する.上顎骨の変形も避けられない.本論文では,耳鼻咽喉科領域で広く行われている内視鏡下鼻内副鼻腔手術によって治療を行った,口腔インプラント治療後に上顎洞炎が併発した2症例と上顎の第三大臼歯の抜歯後に生じた口腔上顎瘻の1症例を報告する.原因が何であれ,上顎洞炎が遷延する原因は上顎洞自然孔の閉塞である.上顎洞自然孔を通じた上顎洞の換気と排泄機能が改善されれば上顎洞炎は治癒する.内視鏡下鼻内副鼻腔手術は上顎洞に元々存在するこの機能を回復させる生理的な治療である.また,Caldwell-Luc手術よりも侵襲が少ない.ただし本手術は十分な修練を積んだ耳鼻咽喉科医でなければ安全に行うことができない.歯科・口腔外科領域の疾患や治療によって上顎洞炎が生じることは珍しくないが,その治療に耳鼻咽喉科医が積極的に参加することを提案したい.

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