門脈血栓症を繰り返した,抗リン脂質抗体症候群を合併した肝硬変の一例

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  • Portal Vein Thrombosis Repeatedly Observed in a Cirrhotic Patient with Antiphospholipid Antibody Syndrome

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抄録

肝硬変患者では門脈血栓の発症をしばしば認めるが,その成立機序は十分解明されておらず,抗カルジオリピン抗体の関与も定見がない.今回我々は,繰り返し門脈血栓症を来した抗カルジオリピン抗体陽性の肝硬変患者を経験したので報告する.症例はアルコール性肝硬変と診断されていた52 歳の男性.呼吸困難を主訴に当院に初回入院した際,肺動脈血栓症を伴った抗リン脂質症候群と診断され,β2-glycoprotein I 依存性抗カルジオリピン抗体陽性であることが確認された.入院後に門脈血栓が急速に発症し,食道静脈瘤破裂を来したが,止血後の抗凝固療法で血栓は溶解した.経過観察中の2 年後にD-dimer の上昇から血栓形成を疑われ,CT にて門脈から上腸間膜静脈に至る血栓を認めた.抗凝固療法にて血栓は消失したが,その2ヶ月後には,再度D-dimer の上昇を伴う門脈血栓形成を認めた.肝硬変患者においては抗カルジオリピン抗体は非特異的に陽性化し,門脈血栓症との関係はないとする意見もある.しかし,β2-glycoprotein I 依存性抗カルジオリピン抗体陽性の場合には門脈血栓症の発生と関係がある可能性を,本症例は示唆している.D-dimer の定期観察は,門脈血栓の早期発見に有用である.

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