ケルト諸語の音論再考 : 共鳴音の体系に関して

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  • Nouveau regard sur la phonologie des langues celtiques : le problème du système des résonantes
  • Nouveau regards sur la phonologie des langues celtiques--le probleme du systeme des resonantes

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抄録

本稿は現在用いられているケルト諸語の音声を主に録音に基づき実際の音声記述を行い、それに基づいて共鳴音に関する問題点を明らかにする。本文は大きく2部から構成されている。前半部は録音を中心とした聞き取りから、先行研究で個別に認定されているケルト諸語の音素に実際の音声表記を与え、全データを整理し一覧表の形にして提示している。この表から、個々の言語に用いられている表記法と実際の音声との間にみられる相違を読み取ることができるように、細かい発音上の違いも示している。後半部は前半部で得られた結果を元に、特にアイルランド語とスコットランド・ゲール語における共鳴音の体系に関する問題を扱う。これらの言語では、例えばl音系列の場合、古ゲール語における表記法に基づいて、伝統的にL, l, L', l'の4種類で書き分けられ、それぞれが異なる音価を示している。しかしこれらの表記は、Ternes(1973)も指摘するように、言語によっても研究者によっても、さらに系列によつても想定される音価が異なって用いられ、正確な表記と音声の対応が見られていなかった。本論では、共時的な音声の観察を通じて得られたデータから、現代のアイルランド語とスコットランド・ゲール語では、まず歴史的に想定される共鳴音体系はほとんど残っていないことが明らかになった。少数の方言を除いては、各系列を構成する4要素が3要素に減少していることが実際の音声記述からわかった。そして、両言語に共通して用いられる表記であっても、それぞれの言語がたどったであろう音変化から互いの対応関係が崩れ、現在では同じ記法で異なる音価を示していることを音声表記とともに示した。このような音変化の傾向は、前半部で示した一覧表にある共鳴音以外の音素についても見られ、各言語を特徴づけていると想定される要素が共通に確認できた。

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