惣領番入制度と五番方 : 吉宗期の事例を中心に

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タイトル別名
  • The Relationship between Tokugawa Yoshimune's Soryo Ban-iri System and Gobankata
  • ソウリョウバンニュウセイド ト ゴバンカタ : キチソウキ ノ ジレイ オ チュウシン ニ

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抄録

本論は江戸幕府八代将軍徳川吉宗によって創始された惣領番入制度について、旗本で構成された幕府直轄軍である五番方との関わりに於いて考察しようとするものである。惣領番入制度とは、旗本の惣領を、家督を相続する前に五番方の番士として召し出すという制度である。部屋住身分にも関わらず召し出されるということは、惣領、或いはその父である当主にとっても大変に魅力的な制度であろう。しかし、それにはひとつの条件があった。すなわち、武芸吟味による選抜を勝ち抜くということである。先に筆者は、この制度の創始を、単なる掛け声に留まらない、制度的な保証を伴った武芸奨励策として位置づけ、徳川吉宗による武芸奨励策の画期性をそこに見た。本論では、こうした前稿の結論をさらに堅固ならしめるため、ふたつの論点から惣領番入制度を分析している。第一の論点は、五番方から各一組を抽出し、その組に属する番士の惣領を対象に、同制度を通じて番士に召し出された者には如何なる恩恵がもたらされたのか。第二の論点は、昇進との関係において、同制度を通じて番士に召し出され、その後に昇進をした者にはどの様な有利があったのか。このような観点で分析を進めた結果、明らかになったのは次の三点であった。第一に収入の増加という恩恵である。惣領の内に番入すれば役料が支給され、当主の家禄に上乗せされることになる。この期間は家の収入が増加する期間ということになる。第二に経歴上の恩恵、即ち、家督相続が遅れた場合であっても部屋住のままで番入できるという恩恵である。部屋住のまま年月を過ごし、家督相続をした段階で既に高齢になっている。惣領番入制度による番入はそのような事態を回避するための有効な手段なのである。第三に、昇進への影響である。惣領番入制度は、家督相続前に得た勤務年数を家督相続後の勤務年数に上乗せし、昇進に影響を及ぼすのである。いずれも、番士の惣領にとっては大きな恩恵である。

収録刊行物

  • 日本研究

    日本研究 46 45-100, 2012-09-28

    国際日本文化研究センター

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