東京電力福島第一原発事故の前後における福島県肥満傾向児の変動(第1報)

書誌事項

タイトル別名
  • トウキョウ デンリョク フクシマ ダイイチ ゲンパツ ジコ ノ ゼンゴ ニ オケル フクシマケン ヒマン ケイコウジ ノ ヘンドウ ダイ1ポウ

この論文をさがす

説明

東京電力福島第一原子力発電所事故(原発事故と略)による放射能汚染により、福島県内の放射能の高い地域では学童の屋外活動が制限された。原発事故前後において、福島県の肥満傾向児出現率がどのように変動したか、その実態を解析した。平成22,24,25 年度都道府県別肥満傾向児出現率(男女計)1,2,3)から、福島県の各年齢(5 歳~17 歳)における出現率(男女計)の高い順に全国順位3 位以内をピックアップして比較した。平成22 年度は、1 位(1)、2 位(2)、3 位(2)であったが、平成24 年度は、 1 位(7)、2 位(2)、3 位(なし)と大きく上昇した。平成25 年度は、 1 位(6)、2 位(5)、3 位(1)と高い状態が継続していた。男児1,2,3)および女児1,2,3)においても同様な傾向を示した。そこで、出現率の高かった5 歳から11 歳の年齢層を対象に、統計的に三元配置分散分析により解析したところ下記のことがわかった。原発事故後の平成24年度および25年度において、男女計および男児(5 歳~11 歳)の肥満傾向児出現率は、原発事故前の平成22 年度より有意に上昇し高い状態が続いていた。原発事故前には、男女間の肥満傾向児出現率に有意な差はなかったが、原発事故後に、男児の方が女児よりも有意に高くなった。福島県と全国平均、東北5県、北海道について、各年度の地域間における肥満傾向児出現率を比較したところ、男女計及び男児のグループにおいて、原発事故後の平成24,25 年度は、福島県の肥満傾向児出現率が他県よりも有意に上昇した。女児のグループにおいては、原発事故前は有意に高いところはなかった。原発事故後の平成24 年度は、福島県の肥満傾向児出現率が他県よりも有意に上昇した。しかし、平成25 年度は、全国平均に対してだけ有意に高く、福島県と他県との有意な差がなかった。男女計および男児のグループにおける各地域の肥満傾向児出現率の年度間の比較により、福島県だけが平成24 年度および平成25 年度において、平成22 年度より有意に上昇していた。女児のグループにおける肥満傾向児出現率の年度間の比較においては、福島県だけが平成24 年度において、平成22 年度より有意に上昇していた。しかし、平成25 年度には肥満傾向児出現率が低下して、平成22年度と有意な差がみられなくなった。東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県および宮城県においては、震災後に肥満傾向児出現率の有意な上昇はみられなかった。福島県においては、原発事故により学童の屋外活動が制限され、肥満傾向児出現率の上昇が生じたものと考えられた。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ