奪われた声の回復 : Joseph Conradの“Amy Foster"からBeeban KidronのSwept from the Seaへ

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  • Retrieve a Woman's Point of View in Swept from the Sea : Beeban Kidron's Adaptation of Joseph Conrad's “Amy Foster"
  • ウバワレタ コエ ノ カイフク : Joseph Conrad ノ “Amy Foster" カラ Beeban Kidron ノ Swept from the Sea エ

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抄録

Swept from the Sea(1997)は、1901年に発表されたコンラッドの短編“Amy Foster"のアダプテーション映画である。およそ100年の時をはさんだ原作と映画は、海難事故によってイギリスの海沿いの村に流れ着いた移民ヤンコと村娘エイミーとの愛と彼の死を村の医師ケネディが語るというプロットを共有しているものの、原作が男性の語りによって物語が進むことに対し、映画では村娘エイミーの視点に沿って二人の愛とヤンコの死の真実が開示されている。原作は長い間、移民ヤンコの悲劇の物語として読まれてきたが、キドロン監督は、ヤンコではなくエイミーの悲劇として物語を構成し、原作においては「信頼できる」と見なされていた語り手医師の狭量さと偏見のために、あるいは共同体や家族からの疎外のために孤独に生きざるを得なかったエイミーの姿を明らかにした。そこには男性の語りの中に閉じ込められた女性の声を回復するというフェミニズムの意識とともに、デビュー作から一貫してマージナルな存在に注目をして映画を製作してきたキドロン監督の問題意識が反映している。エンディングは原作とは大きく異なっており、語る者と語られる者の和解が付与されているが、それによって女性の声の回復の先にある新たな絆という現代的解釈がこのアダプテーションに与えられることになった。

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