「客観の優位」について : アドルノ哲学における「身体的なもの」

書誌事項

タイトル別名
  • Über den "Vorrang des Objekts" : Das Leibliche in der Philosophie Adornos
  • キャッカン ノ ユウイ ニツイテ アドルノ テツガク ニオケル シンタイ テキナ モノ

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説明

本稿はアドルノ哲学の中心であるにもかかわらず、未解決にとどまっている「客観」という概念を論究するものである。この難問に本稿は、「身体的なもの」を巡る主題系を手がかりとして、迫ってゆきたい。この身体的なものという契機は、アドルノ思想の社会批判とも連接するものである。そして、その社会批判とは、主体化の成立に遡ってなされるものである。したがってこの問題を、「主体性の原史」を暴いたものとして、『啓蒙の弁証法』における「オデュッセイア論」とも関連づけて考察してゆく。それによって『啓蒙の弁証法』とそれ以後の『否定弁証法』などの書物における、アドルノ哲学の僅かな姿勢の変化が炙り出されることになる。ともかくも身体的なものとして客観という概念を突き詰めてゆくことで、アドルノが、「客観の優位」という、ある意味で曖昧な表現しか許さなかったその所以がより鮮明に浮かび上がることとなろう。

収録刊行物

  • 年報人間科学

    年報人間科学 20-1 97-109, 1999

    大阪大学人間科学部社会学・人間学・人類学研究室

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