障害学の動向 : Disability & Societyを手がかりに

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タイトル別名
  • The Trend of Disability Studies : a Review of "Disability & Society"
  • ショウガイガク ノ ドウコウ Disability Society ヲ テガカリニ
  • ショウガイガク ノ ドウコウ Disability Society オ テガカリ ニ

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抄録

研究ノート

Disability Studies(障害学)は、一九六〇年代後半から七〇年代中葉にかけて世界的規模で起こった、障害者による社会運動を背景として誕生した。九〇年代になって、日本にも学問として紹介されている。日本の障害学はイギリスの影響が強いことから、本稿ではイギリスの学術誌“Disability &Society”(以後DSとする)を対象として、国際的な障害学の動向を把握することを目的とする。一九八六年の創刊号から二〇〇八年二三巻四号までのDSに掲載された論文のうち、アブストラクトのある七八六件の論文を一次資料として採用し、各論文の主題を類型化しカテゴリーに分類して、そのトレンドを分析した。DSにおいて扱われる障害種別は次第に多様化する傾向にある。発刊当初から九〇年代半ばまでの間、障害を社会的文脈との関連において理論化していこうとする研究が盛んであった。それは障害学の核ともいうべき「障害の社会モデル」を精緻化するとともに、社会モデルの枠組みを用いて既存のさまざまな社会事象を分析する取り組みであった。しかし、それ以降は社会モデルを革新し、その射程範囲を広げていこうとする方向にある。また障害学の発展にともない、より多様な国と地域、より多様な障害種別がその論考の対象となってきている。したがって、今後は、エスニックマイノリティや女性障害者をも包摂し、多様化する障害種別にいかに対応していける理論を構築できるかが大きな課題となるだろう。

収録刊行物

  • 年報人間科学

    年報人間科学 30 33-53, 2009

    大阪大学大学院人間科学研究科社会学・人間学・人類学研究室

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