週刊誌『アサヒ芸能』と性風俗の構成

書誌事項

タイトル別名
  • Asahi Geinou and the Constitution of Sei-Fuuzoku
  • シュウカンシ アサヒ ゲイノウ ト セイフウゾク ノ コウセイ

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説明

本研究は戦後日本における「性風俗」の変遷に、その重要な構成要件としてのメディアという視角から接近する試みである。こうしたメディアのなかでも、本稿でとくに注目するのが男性週刊誌『アサヒ芸能』である。『アサヒ芸能』はその草創期の頃より、下半身の世界から社会を捉えていくという編集方針にたった雑誌作りを行い、二流であることを積極的に引き受けていった稀有な雑誌である。その取り組みは、四十年以上にもわたって『アサヒ芸能』の読者層に受け入れられている。では実際「二流」であるとはどういうことなのか。それを、『アサヒ芸能』の編集方針に大きな影響を及ぼした売春防止法制定前後の記事を中心に見ていった。本稿では、「性風俗」をセンセーショナルなものとして取り上げられ、認識される性のあり方とした。それは必然的に移ろいやすいものではあるが、同時にその基盤はあくまでも日常生活に根差したものである。そしてこの「性風俗」が売防法のインパクトによって変容を遂げる。つまり売防法はかつてあった性の境界を崩壊させ、性的な空間が架空の境界によって成立するようになる。そのとき、「性風俗」の構成要件であるメディアの役割が増大することになるのである。しかしこうした議論からは本研究の限界もまた明らかにされる。つまり『アサヒ芸能』が「性風俗」をいかに構成していくのかについては、今回議論の中心に据えた『アサヒ芸能』の記事をみていくだけでは不十分であり、そのプロセスを把握するには、記事以外の要素が必要不可欠なものとなる。つまり『アサヒ芸能』というメディアに演出されていく「現実」とそれを演出していくものたちの「現実」という要素である。これらの要素について検討していくことが今後の研究の課題である。

収録刊行物

  • 年報人間科学

    年報人間科学 21 191-205, 2000

    大阪大学人間科学部社会学・人間学・人類学研究室

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