「境界線に向き合う力」としての「教養」 : コリア国際学園における教養・Liberal Arts科の実践

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タイトル別名
  • The Liberal Arts as a Competency to Face Borderlines : A Case Study of the Kyoyou-Liberal Arts Class at the Korea International School
  • キョウカイセン ニ ムキアウ チカラ トシテノ キョウヨウ コリア コクサイ ガクエン ニオケル キョウヨウ Liberal Artsカ ノ ジッセン

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抄録

本稿の目的は,キー・コンピテンシー概念を「境界線に向き合う力」として再定義し,そのような能力の育成を試みる授業実践のあり方について考察することである。事例としては,コリア国際学園で行われている「教養・Liberal Arts科」(教養科)という授業を取り上げた。教養科では,教育者側の「問い」と被教育者側の「回答」による対話を中心とした授業実践が行われていた。教育者側はそのような対話のなかに「矛盾」を挿入することを通して,教育者側の問題状況への主体的なかかわりを求めていた。しかし,「普通の授業」とは異なり,ときに「問い」に開かれたまま終わる教養科のような実践は,生徒の側に困惑を招いたり,「やりすごし」の余地を残すものとなっていた。主体性の強要が語義矛盾であることを踏まえるならば,そこで教育者側の対応は,主体性の発露を「待ち続ける」か,主体性の希薄さそれ自体を「『問い』に転換する」といったものに止まる。このことは「境界線に向き合う力」の育成を目指す授業実践が原理的にはらむジレンマであると思われるが,そのようなジレンマの所在を語り示す教育者のあり方は,「境界線に向き合う力」としての「教養」を培う契機になりうる。

収録刊行物

  • 大阪大学教育学年報

    大阪大学教育学年報 16 115-132, 2011-03-31

    大阪大学大学院人間科学研究科教育学系

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