「愛」のはけぐちとしての李香蘭 : 日本と大陸へ「虹のかけ橋」を彩る夢の女王

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タイトル別名
  • Li Ko Ran : Object of Violent Affection
  • アイ ノ ハケグチ トシテノ リ コウラン ニホン ト タイリク ヘ ニジ ノ カケハシ オ イロドル ユメ ノ ジョオウ
  • アイ ノ ハケ グチ ト シテ ノ リ コウラン ニホン ト タイリク エ ニジ ノ カケハシ オ イロドル ユメ ノ ジョオウ

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抄録

1937年、満州映画協会(略して「満映」) は国策会社として設立され、プロパガンダ映画を作りはじめた。満映の作品はほとんど中国語で中国人向けだが、満映の日本内地への効果は見逃せない。満映の唯一のスター李香蘭は、映画や歌を通して爆発的な人気を集めた。1941年に東京の「唄う李香蘭」ショーでは、10万人以上の群集が劇場につめかけてさわぎとなった。李は「支那の夜」という映画で、長谷川一夫と組んで、「理想的」な植民地関係を演じて、スターとなった。映画の中で日本を代表する長谷川が、中国を代表する李を殴る。そのことによって、李は、長谷川の愛に目ざめる。「支那の夜」が成功してから、李は同じようなパターン化された映画に出演し続けた。若い日本人ヒーローが大陸へ渡って、現代的な職業(医者、建築家、エンジニアー等) につき活躍する。一方、李は芸術的、感情的、自然的だという風に描かれている。李の魅力を感じるヒーローは、十分に自身の男らしさを見せてから、李を選ぶのだが、最後に、二人は、「国のため」に別れた。李の戦時中の映画では、当時の日本の「男らしさ」に対する不安定さが表れている。同時に、そこでは、日本の中国に対する暴力、或いは、男の女に対する暴力を正当化するプロパガンダ効果が見られる。人気を集めた李の登場するプロパガンダ映画によると、暴力は一種の愛情表現にすぎない。

収録刊行物

  • 年報人間科学

    年報人間科学 20-2 411-419, 1999

    大阪大学人間科学部社会学・人間学・人類学研究室

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