農民文学と<女が読む小説>「通俗小説」のはざまで : 加藤武雄の文学論と「義民」小説

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タイトル別名
  • Integration of Peasant and Popular Literature for Women : A Case of Kato Takeo
  • ノウミン ブンガク ト オンナ ガ ヨム ショウセツ ツウゾク ショウセツ ノ ハザマ デ カトウ タケオ ノ ブンガクロン ト ギミン ショウセツ
  • 農民文学と〈女が読む小説〉「通俗小説」のはざまで : 加藤武雄の文学論と「義民」小説
  • ノウミン ブンガク ト 〈 オンナ ガ ヨム ショウセツ 〉 「 ツウゾク ショウセツ 」 ノ ワ ザ マデ : カトウ タケオ ノ ブンガクロン ト 「 ギミン 」 ショウセツ

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抄録

「通俗小説」は<女が読む小説>として、文壇において、また文学史において、低い地位に置かれてきた。農民文学者でもあり「通俗小説」の流行作家でもあった加藤武雄は、その作家人生の大半において苦悩していた。自然主義文学、やがて明確に農民文学を志すようになりながらも、家長として家族を養うため、長男として故郷の実家を助けるため、さらには故郷の農村や農民文学運動を経済的に支えるために、原稿料の高い新聞・雑誌の連載「通俗小説」を次々と書かねばならないという葛藤を抱えていた。「通俗小説」作家であることを恥じつつ、文壇における「通俗小説」蔑視には反発覚えていた。「私小説」「心境小説」はては「楽屋落ち小説」と言われるような、文壇内輪受けする短編が「芸術」とされ、大衆読者が生活の中で心の糧とするような、物語とモラルを含んだ長編小説が軽蔑されることには、不満をおぼえていたのである。一方で、農民を埒外におき、工場労働者のみを対象にした、アジテーションのような紋切り型のプロレタリア文学が称揚されることにも違和感を感じていた。そうした葛藤の中で、女性読者も含む大衆の関心を引く物語構造をもつ長編小説を描く技能の鍛錬と、農民小説の志を結びつけていく。「通俗小説」と農民文学の間で引き裂かれていた一人の作家が、そのギャップを埋める方向を歴史小説にもとめていく過程を明らかにする。

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