武家夫婦の日記と病気記録 : 広島藩儒者頼春水・静子の〈障害〉認識を考える

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書誌事項

タイトル別名
  • Samurai couple’s diary and illness record:Consideration on the perception of disability by Rai Shunsui (頼春水), a Confucian scholar of the Hiroshima Domain (広島藩), and his wife, Shizuko (静子)
  • ブケ フウフ ノ ニッキ ト ビョウキ キロク : ヒロシマ ハンジュシャライシュンスイ ・ セイコ ノ 〈 ショウガイ 〉 ニンシキ オ カンガエル

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抄録

本稿は、近世日本の日記史料にみえる生活史としての病気記録より、前近代における障害認識の一端に迫る可能性を探ることを課題とする。 / 分析対象は、広島藩家臣で儒者の頼春水と妻・静子がそれぞれに綴った日記である。春水は藩への召し抱え、静子は広島在住を契機に、日記をつけ始め、亡くなるまで、夫・父また妻・母として、それぞれに日々の生活を書き続ける。その中には家族の病気に関する記事が多数見いだせるが、史料的にも希有なかかる日記の特色を整理する。 / その作業を前提に、病気や障害認識への議論を進める。泰平で家職に精勤するのが「家」相続の価値観として重視される近世日本の時代性のなか、健康や病気への関心の高まりが想定されるが、個人の日記が、その実態や認識をめぐり重要な手がかりを与えてくれるのを、頼春水夫婦、とくに妻・静子の日記は教える。現代医学の観点(医学史)からの検証とともに、病気との境界があいまいでスペクトラムの関係ある障害の認識が、社会性(社会生活を営む上での適正)や人間性(仕事に精勤できる健康な心身)の欠如という考え方を背景に形成される様相を、長男(頼山陽)が「狂病」「癇狂」の「持病気」を理由に廃嫡(嫡子としての地位の剥奪)されたことを軸に考察する。

収録刊行物

  • 障害史研究

    障害史研究 2 63-77, 2021-03-25

    九州大学大学院比較社会文化研究院

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