社会のセーフティ・ネットとして機能するキルギスの地域コミュニティ

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タイトル別名
  • Study on rural community in Kyrgyz as social safety net
  • シャカイ ノ セーフティ ・ ネット ト シテ キノウ スル キルギス ノ チイキ コミュニティ

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研究の概要(和文):中央アジアの小国・キルギス共和国(以下、キルギスと略す)の農村部や地方都市における血縁や地縁、職縁から成り立つ地域コミュニティには、貧困や失業にあえぐ社会的弱者に対して125喜捨や貸付を行なうなど金銭を融通し合うなどの共助(住民間の相互扶助)の機能が現存 している。こうした救済は、本来公助(政府による所得 再分配など)によって行われるべきであるが、財政事情が厳しく、金融市場が十分に発達していないキルギスでは、こうした地域コミュニティが社会のセーフティ・ネッ トとしての役割を果たしている。1991年の旧ソビエト連邦からの独立以降キルギスでは、拙速な市場経済化政策により、地方都市や農村部の若者は現金収入を得るために経済成長著しい隣国のカザフスタンやロシアへと出稼ぎに出た。しかし、2008 年の世界同時不況により出稼ぎ者の多くは雇用調整の対象となって失業し、帰国せざるを得ない状況になった。職を失って帰国した人々を地方都市や農村部では血縁や地縁など のネットワークが吸収している。また、銀行が相手にしないような貧困層に対して地域の富裕層が違法に貸し金 業を営んでいる。さらに、6 ~ 12 名の小規模なサークルを作り一年サイクルを基本として「チョールニー・カッサ」と呼ばれる「講」を作りよりまとまった金銭を工面 している。それでは、こうした地域コミュニティはどのような過 程を経て形成され、現在どのような形で存在しているのか。本論では、先行研究に加えて、主に参与観察並びに 聞き取り調査に基づいてネットワークを分類し、その機 能と役割、さらに問題点の形式知化を試みた。今後、キ ルギスの政策担当者には、こうしたネットワークに深刻なダメージを与えることなく、逆にネットワークの機能 強化に根ざした社会・経済政策を立案し、施行していくことが求められよう。この度キルギスの地域コミュニティが社会のセーフティ・ネットとして機能しているという事実を形式知化することは、政策担当者にその存在を認知させるという点において、一定の意義があると考える。

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