南大東島におけるカルスト化過程の一考察

書誌事項

タイトル別名
  • Karstification Processes on Minamidaito Island in the Nansei Archipelago, Southwest Japan
  • ミナミダイトウジマ ニ オケル カルストカ カテイ ノ イチ コウサツ

この論文をさがす

抄録

南大東島は大東石灰岩を基盤として長期にわたり,カルスト化を受けたサンゴ島である。島の周辺はハグ上とよばれ,約40~50m a.s.l. の高地になっていて,ライムストーンウォールが2‐4列分布する。中央部はハグ上より速度の早い溶食作用を受けたと考えられる。ライムストーンウォールの最高地点は75.1m a.s.l.である。中央凹地には多数のドリーネが分布し,ドリーネ湖も存在する。この現在のハグ下の凹地と,ハグ上の台地を形成するまでに,160万年が必要であったと算出した。フィリピン海プレートの上に位置する南大東島は隆起率が低い島であり,5e のサンゴ石灰岩の年代測定値から島の隆起率は0.05m/ka と報告されている。この島の東側の海軍棒に分布する完新世ベンチと背後の海岸地形における溶食作用に注目し,その計測を行った。海軍棒の完新世における高海水準時に形成されたと推定できるベンチは約3.5m a.s.l.であり,幅は約20mで良く発達している。このベンチの上は極めて平坦である。基盤は更新世以前に形成された緻密なドロマイト化した大東石灰岩である。しかし,ベンチの前面には幅の狭い,プラットフォームが2~3m a.s.l.に発達する。このベンチとプラットフォームでは,海食凹地であるカメニツァの発達が異なる。ベンチの上のカメニツァでは直径が50cmを越えるが,深さは20~25cmのものが発達する。しかし,その分布密度は少ない。前面のプラットフォームには直径20~30m で,深さが20~50cmのカメニツァが密度高く形成されている。このベンチとプラットフォームの溶食地形の差と密度から,プラットフォームには,極めて溶けやすい若いサンゴ石灰岩を混じえた礫岩質石灰岩が大東苦石灰岩を薄く覆っている。海軍棒の海岸には,開口部10m a.s.l.,洞窟の奥が12m a.s.l.の海食洞が分布する。海食洞相当レベルには,幅の狭いベンチが約12m a.s.l.に発達する。これは太田等の最終間氷期の5e 相当面である。この5eのベンチには,土壌化が進行した場所があり,樹木(ガジュマル:Ficus microcarpa とモンパノキ:Argusia argentea)が進入している。さらに背後のハグ上にかけて,約20m a.s.l.から30m a.s.l.では,溶食し残されたサボテンと地元で呼ぶピナクルが発達する。標高約20m a.s.l.より上位には更新世のドロマイト化した大東石灰岩が更新世以前のドロマイト化した大東石灰岩を不整合で覆っている。この両層の間の不整合面には,島の北西海岸に,古土壌が化石化したレインボーストーンが分布する。このレインボーストーンの示す不整合面は長期にわたるカルスト化がこの時に起ったことを示していると考えた。両不整合面でカルスト化が長期にわたり発生した理由は,長期にわたる海水準の低下があったためと考えた。

収録刊行物

関連プロジェクト

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ