和牛肥育経営の経済性 : 鹿児島県を中心として

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タイトル別名
  • Profitability of Japanese Black Cattle Feeding Farms in Kagoshima Prefecture
  • ワギュウ ヒイク ケイエイ ノ ケイザイセイ カゴシマケン オ チュウシン ト

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抄録

本稿では,和牛肥育経営の経済性を明らかにするために,全国最大の和牛産地である鹿児島県を中心として, (1)生産費の構造と収益性, (2)収益性影響要因,(3)生産関数の計測に焦点をあてながら分析してきた.資料は1980年の農林水産省「肥育牛(黒毛和種の去勢若齢肥育)生産費個表」鹿児島県分である.分析結果は以下のとおりである.(1) 鹿児島県における和牛肥育の概況を検討すると,1982年現在8,312経営が54,440頭を飼養し, 1戸当たりの規模は6.5頭である.しかし,1-2頭規模が68.4%と大半を占め,20頑以上規模は7,7%にすぎない.(2) 1980年時点で肥育期間は15.8か月,D.Gは0.65kg,飼料要求率は8.5である. 飼料要求率は大規模はど大きい傾向にあり,大規模経営における濃厚飼料依存度が高いことを示唆した.(3) 1頭当たり第2次生産費は604,391円,所得は112,872円, 1日当たり家族労働報酬は6,065円である.価格・生産費比率は1.03と九州(1.08)及び全国(1.10)水準より低かった.鹿児島県の場合他地域に比べて総じて生産費が高く収益性が低いが,その主な要因は自給粗飼料と購入濃厚飼料の代替が円滑でなく,配合飼料への依存度が高いにもかかわらずそれが省力化及び増体効率の改善に結びつかないところにあると思われる.(4) 肥育期間の延長と出荷体重の増大は必ずしも肉質の改善や収益性の向上に寄与していないように思われる.素牛の価格変動や枝肉単価の変動は収益性に重大な影響を及ぼすことがわかった.(5) 価格・生産費比率は1日当たり家族労働報酬の有力な説明要因であり,肥育期間の延長はD.Gの減少をもたらすことが確認できた.所得向上は相反する2つの要因,生産費の節減と販売価格の向上の適正均衡によって達成できる.(6) 粗収益を従属変数としたコブ・ダグラス型生産関数の計測結果によれば,生産弾性値は素牛費が0.5959と最も大きく, その次が飼料費0.2278,労働時間0.1324, 流動資本財費0.0576であった.パラメーターの推定値の和は1.0137であったが,検定結果規模の経済性の存在の有無は立証できなかった.一方,限界生産力の分析結果によると素牛費千円の追加的増加は1,409円の租収益増加をもたらし,素質のよい素牛の購入が和牛肥育経営において非常に重要であることを示唆した.

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