果実褐変防止剤としてのシステインの検討

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  • Evaluation of cysteine as anti-browning substance of fruit
  • カジツ カッペン ボウシザイ ト シテ ノ システイン ノ ケントウ

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説明

1. 剥皮したリンゴをシステイン溶液に浸漬すると褐変をある程度防止することが出来た.その作用はとくにpH6以上の溶液で有効であり弱酸性では果実は桃色を呈した. 2. リンゴ果汁についても同様の効果が認められた.果実の2倍量のシステイン溶液を用いて果汁を調製する場合その褐変を防止するには5×10^-4M程度のものが必要であつて,それより低い濃度では弱酸性溶液を用いた場合と同様に桃色を帯びた. 3. リンゴ果実からアセトンで脱水して作つた乾燥粉末の抽出液にクロロゲン酸やピロガロールを加えると生果の場合と同様に反応液は褐色を呈した.この反応系を用いるモデル実験でシステインおよびSPの褐変防止効果を測定し,システインはSPにわずかに劣るだけであることを確めた.また抽出液をあらかじめ亜硫酸処理を行なうことにより褐変力が若干低下することを観察した. 4. リンゴのシステイン処理を長期間行なうと悪臭をもつガスを発生しまた液に白濁を生じた.このガスは硫化水素であつてその発生は加熱によつて防止されることから酵素性のものでありシステインデスルフヒドラーゼの存在が推定された.また白濁液から生成沈澱を集めその赤外線吸収スペクトルを測定し,クロロゲン酸やシステインないしシスチンとは明らかに異りむしろ渋柿の脱渋処理を行つて生じた沈澱に類似していることを観察した. 5. システインの効果は褐変防止のほかに含硫アミノ酸の強化という栄養的意義がある.そのためシスチンおよびメチオニンの影響も検討したが,前者には褐変防止能はなく,またメチオニンはかえつて褐変を強く促進することが認められた. 6. 渋柿をシステインに浸漬しSPの場合と同様に白色沈澱を生成した.この沈澱はSPの場合と類似の機構で生じたことを赤外線吸収スペクトルの比較から推定した.

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