余暇社会の進展と野外活動の場の整備について : 森林の合理的利用を目指して

書誌事項

タイトル別名
  • On the Extension of Leisure and Setting Site for Activities, Recreation and Study, in Natural Area : The Best Way of Setting Site for Recreation and Study in Forest Area
  • ヨカ シャカイ ノ シンテン ト ヤガイ カツドウ ノ バ ノ セイビ ニ ツ

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抄録

リゾー卜開発に対する関心は,ここ数年,過剰といえるほどに盛り上がっている.官民各自による,あるいは官民共同によるリゾート開発構想は,全国各地においておびただしく樹立されている.このリゾー卜開発への急速な傾斜は,最近の経済的条件の向上による余暇社会の進展からみて必然的といえるものである.しかし,現在までのリゾート開発の在り方は,拠点となる地域の自然破壊につながることが多く,また利用者である国民一般のもつ条件や要求に必ずしも適合したものとなっていない.今後,わが国では週休2日制の定着,有給休暇の増加が確実に進行していくと予想されることから,国民の余暇時間の在り方や過し方の科学的な考察と,余暇活動が行われる「場」の合理的な設定と供給が社会的に緊急な課題となってきている.これらの理由から,余暇活動の推進のためには,いわゆる「リゾート開発」といった観点から創造されたエリアだけでなく,利益を目的とした施設をできるだけ抑制し,自然環境が維持,保全されたエリアの形成と利用が不可欠となってくる.そのようなエリアの形成は,白然環境の中でもとくに自然度の高い森林の活用によって実現されるのである.その意味で,森林を野外活動の場として,いかに整備していくかは,余暇社会の確立に際して最大の課題といえる.森林を野外活動の場として適切に整備することは容易ではないが,積極的に野外活動の場として森林を整備する合理的方法を探究しなければならない.以上から本稿の課題は,つぎの2点に整理することができる.第1に,余暇社会,すなわち余暇時間が豊富にあってそれを生活の充実のために有効に活用することが望まれる社会では,野外,とくに自然環境における活動が大きな比重を占めると思われる.野外活動は,レジャーの範疇に含まれるところの他の屋内的な娯楽と違って,心理的,身体的に健全な効果をもたらすものであるが,その発展は,ハードウェア,つまり社会資本,そしてソフトウェアである利用システム,の両面にわたる充実がともなわなければ実現されない.換言すると,自然環境における野外活動は,他のレジャーと異なって,交通手段の進歩,道路等の交通網の拡充,さらに年間労働時間の減少等の社会的諸条件が充足されなければ十分な進展が期待できない性格をもっている.したがって,それらの実現を期すために,この社会資本の現状分析と今後の社会的諸条件の変化の予測は極めて重要である.第2は,自然環境における野外活動の場の整備の促進である.それは,自然環境を構成する水面地域,平野地域,森林地域のいずれにおいても進められなければならない.しかし,とくにわが国の国土面積の67%を占める森林を野外活動の主要な対象地として活用しなければならない.現在のところ,企業によるリゾート開発を除けば,主に国有林,県・市有林等の公的森林の一部が野外活動の場として整備されている.とはいっても,それだけでは野外活動の場は少なすぎる.また,全国的な配置も必ずしも適切ではない.森林地域における野外活動の場を増設するためには,国立・国定公園の特別地域に指定されたところのように傑出した景観をもつ地帯では過剰利用による景観破壊が進んでいることから,都市周辺や里山の普通の風景をもつ森林地域を整備していかねばならない.しかしながら,現在,野外活動の場としての森林の整備に,全体的にまだわずかな費用しか投下されていないのである.今後,野外活動の場の整備費用の調達,費用負担の方法を本格的に検討しなければならない.以上の観点から,本稿は,第1に,余暇社会の進展を規定する条件,すなわち国民生活の基本をなす経済的,社会的要因の推移とそれにともなう余暇活動の向上を明らかにし,第2に,野外活動の種類と現状,さらに森林を対象とした活動状況を把握し,第3に,森林活動の場となる「レクリェーションの森」の整備状況,第4に,野外活動の発展の方策について論述する.

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