<論説>大寨 : 中国における農村建設の典型

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タイトル別名
  • <Articles>Tachai : the model of the socialistic village reconstruction
  • 大寨--中国における農村建設の典型
  • ダイサイ チュウゴク ニ オケル ノウソン ケンセツ ノ テンケイ

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抄録

山西省の太行山脈中の一山村である大寨生産大隊は中国における社会主義的農村建設の典型とされていて、一九六四年以来、「工業は大慶に学び、農業は大寨に学ぶ」運動が全国的に展開されて来た。しかも文化大革命の大風大浪の中において、大寨の声価はますます高まり、大寨の作風に学ぶ運動は今や全国的大高揚を迎えている。それでは大寨はどのような点で典型と見なされているのだろうか。従来の大寨の紹介は一窮二白の状態にあり、山も谷も荒れはてていた山村が、あらゆる困難を克服して、自然改造をなしとげ、安定多収穫の耕地(穏産高産田) を作り出した点に主眼がおかれていた。大寨は同時に農業生産技術の面でも、自力で、先進的な、高水準の生産技術を開発した点で模範的である。だが、大寨が学ばれねばならない点は高い生産力水準をかちとったことに限られるべきではなく、むしろこのような生産力上昇の起動力をどこに求めたかが重要なのである。大寨ではその起動力を団結した貧農・下層中農の積極性に求めた。個々の力をとって見れば半人前にも満たない老人や子供たちが、集団の威力を発揮して、中農上層を上廻る生産をあげたことがその出発点であった。大寨の幹部たちはこの教訓にもとずき、常に貧下中農と団結して、共に学び、共に労働し、共に生活して、自力更生の難事業に挑み、失敗を教訓に生かして、一歩一歩成功をかちとった。「闘争、失敗、再闘争、再失敗、再闘争、直至勝利」を地で行った現代の愚公たちは、その闘争の中で、社会主義建設と言うものが、常に四旧との戦いであり、それを維持、復活させようとする、地主、富農、反革命分子、悪質分子との激しい闘争の場であることを身を以て体験し、毛沢東思想の活学活用により、その本質を看破し、それを打破することに努めた。このように階級闘争、生産闘争、科学実験と云う三大革命運動の担い手として、大寨は社会主義農村建設の典型とされたのであるが、「走資派」の数次に亘る攻撃に反撃を加えつつ、勤倹弁国、勤倹弁社の精神を守り、「謙虚で、慎重で、おごりをいましめ、あせりをいましめ、誠心誠意人民に奉仕し」、「個人の利益や小集団の利益から出発しないで、すべて人民の利益から出発」して、社会主義中国を大衆的基盤の上に樹立する原点となっている点でも大寨は今日なお典型たりえていると言うことができるであろう。

収録刊行物

  • 史林

    史林 51 (6), 856-889, 1968-11-01

    史学研究会 (京都大学文学部内)

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