<研究ノート>いわゆる神勅文の成立と仏教

書誌事項

タイトル別名
  • <Note>The Formation of So-called "Shinchokubun" (Divine Order by Sun-Goddess Amaterasu) and Buddhism
  • いわゆる神勅文の成立と仏教
  • イワユル シンチョクブン ノ セイリツ ト ブッキョウ

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説明

天孫降臨説話のなかで、最も発展した形を示す『日本書紀』第一の一書にあらわれるアマテラス大神は、光り輝く装いをし、国土統一の「言葉」を発し、そして皇祖神であることに要約されるが、この神格の形成に、仏教の影響があったと思われる。天武・持統朝の国家仏教形成期に重用された『金光明経』の記述は、光り輝く表現で満たされており、その光明は、太陽にたとえられている。ほの暗い仏殿に安置された金銅仏がかもし出す金色のイメージも、「天照大神」像に通ずるところがある。君主の絶対性に宗教的根拠を与る教説も、この経典に用意されていた。アマテラスが五部神らを前にして、ニニギに国土統治の命令を下し、皇統の無窮を祝福する構想は、経典で仏が弟子らの成仏を証言する「懸記」の思想を思わせる。いわゆる神勅文をふくむ天孫降臨説話の構成者の一人として、天武・持統朝に活躍した中臣大嶋をあげたい。

収録刊行物

  • 史林

    史林 54 (2), 312-325, 1971-03-01

    史学研究会 (京都大学文学部内)

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