<論説>一三世紀アイスランドにおける平和維持 : ノルウェー王権受容に関する一考察

  • 松本 涼
    京都大学大学院文学研究科博士後期課程・日本学術振興会特別研究員

書誌事項

タイトル別名
  • <Articles>Peacemaking in 13th-Century Iceland : A Consideration of the Submission to Norwegian Kingship
  • Peacemaking in 13th-century Iceland: a consideration of the submission to Norwegian kingship
  • 一三世紀アイスランドにおける平和維持--ノルウェー王権受容に関する一考察
  • 13セイキ アイスランド ニ オケル ヘイワ イジ ノルウェー オウケン ジュヨウ ニ カンスル イチ コウサツ

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説明

九三〇年頃の法と集会制度の成立から、一二六二/六四年のノルウェー王に対する臣従誓約に至るまでのアイスランドは、近代以降「自由国」と呼ばれ、王権を戴かない社会として知られている。本稿では、「自由国」とノルウェー王権受容との関係を再考する試みとして、アイスランド固有の散文物語「サガ」を主要史料とし、一三世紀アイスランドにおける平和と権力の在り方を解析した。従来、一三世紀前半は、有力者間の権力闘争の激化により、王なき「自由国」を支えていた血讐(報復義務) を基盤とする平和維持システムに破綻を来す時期と捉えられてきた。しかし、ノルウェー王との関係も視野に入れると、支配層に対し一定の発言力を保ち続けていた農民集団が、新たな「平和維持者」としてノルウェー王を選択した可能性も窺える。また、王権受容後に関しては、王による法制度の改編のみに考察が偏ってきたが、同時期を描くサガに着目すると、血讐の存続も確認される一方、ノルウェー王の裁判権が直接対面することのない農民層にも徐々に拡大してゆく様子がみてとれる。すなわち、一三世紀アイスランドは、ノルウェー王権をも構成要素のひとつとする平和維持システムの緩やかな変容過程にあったのである。

収録刊行物

  • 史林

    史林 91 (4), 694-727, 2008-07-31

    史学研究会 (京都大学大学院文学研究科内)

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