<論説>東大寺大勧進円照の歴史的位置

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タイトル別名
  • <Articles>The Turning Point in the Role of the Todaiji Daikanjin
  • 東大寺大勧進円照の歴史的位置
  • トウダイジ ダイ カンジンエンショウ ノ レキシテキ イチ

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説明

本稿では東大寺大勧進円照の分析を通じて、大勧進と造営料国を取り巻く状況の変容を明らかにした。大勧進円照が登場する歴史的前提には、別当定親による造営料国の知行という事態があった。これにより寺僧等は造営料国の富に注目し始めていく。そうした中で大勧進に就任した円照は、<造営料国の収益=造営料>という原則を転換し、正税等を恒常的に修造用途に充当する体制を作ったほか、さらにそれを寺家用途・寺僧得分にも振り分ける流れを基礎付けた。しかし、円照のこうした人法に対する視線は別当定親との有縁関係に規定される側面を有していた。つまり、円照の画期性は定親との有縁関係という特有の条件から現れたといえるのである。造営料国の富が寺内に還元されていく動きは十三世紀後半には定着した。だが、それによりかえって寺内には深刻な対立が醸成されていった。「関東止住名誉僧」の大勧進はそのような問題の反動から要請された存在なのである。

収録刊行物

  • 史林

    史林 93 (5), 603-632, 2010-09-30

    史学研究会 (京都大学大学院文学研究科内)

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