<論説>平安貴族社会と「貴種」

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タイトル別名
  • <Articles>The Aristocracy in the Heian Period and Kishu (Noble Birth)
  • 平安貴族社会と「貴種」
  • ヘイアン キゾク シャカイ ト 「 キシュ 」

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抄録

貴種は日本中世権門の上流階層の身分を表す概念であるが、その語は古代の史料からも見られる。古代史では貴種を天皇の血統と関連付けて、中世の貴種との関係は言及されなかった。本稿は、史料上の「貴種」の用例を検討し、その成立と転換の考察を通して、古代から中世への転換期における社会の変容の様相を捉える。まず、九世紀の文人貴族による文書から「貴種」が三位以上ないし公卿の子孫、ひいては王臣家の子弟を指すことを明らかにした。歴史学ではあまり使われなかった詩序を史料として活用し、貴族日記の記事を分析することで、持続的な公卿地位の継承なしに「貴種」と称される家柄の存在を一一世紀後半から確認した。同じ先祖を持つ門流から「貴種」の家とそうでない家が分岐する現象を通して、一一世紀中葉には貴族社会の変動に伴って「貴種」の家が成立し、家格の性格を帯びるようになった「貴種」が中世権門の身分へとつながった点を指摘した。

収録刊行物

  • 史林

    史林 100 (4), 465-490, 2017-07-31

    史学研究会 (京都大学大学院文学研究科内)

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