宮城大学食産業学部附属農場の植物相

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  • Flora in the Research Farm of Miyagi University, School of Food, Agricultural and Environmental Sciences
  • ミヤギ ダイガク ショク サンギョウ ガクブ フゾク ノウジョウ ノ ショクブツソウ

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抄録

2006〜2007年、宮城大学食産業学部附属農場(仙台市太白区坪沼字沼山、面積:31.54ha)の植物相を解明し、併せて食産業の素材として開発が可能な植物種を把握することを目的として、本研究を行った。(1)当農場の前回の報告からイトヒバ、ヒノキ、カラマツ、ウメ、イチジク、エンコウカエデ、オオタチツボスミレを除いた。また前回、ハンショウヅル、ツクバネウツギ、アキノタムラソウ、ミヤコザサ、ヒロハアズマザサとした植物は今回それぞれ、トリガタハンショウヅル、ウゴツクバネウツギ、ミヤマタムラソウ、センダイザサ、アズマザサと同定した。(2)当農場から115科590種2亜種20変種20品種4雑種の合計636種類の野生、帰化および逸出を確認し、その目録を付表に示した。シダ率は9.1%で東北大学植物園や仙台市太白山自然観察の森より高く、帰化率は9.0%で両園よりも低い。(3)前回の報告と今回の結果を比較した。前回確認した植物のうち72種類が今回確認できなかった。その主因は31年間の植生の遷移や環境の変化および発足初期の農場整備工事などによる絶滅(キジムシロ、サワギキョウほか)、調査の時期やコースの相違(ブナ、ホウチャクソウほか)の2つと推察した。一方、前回の記録になく、今回新たに確認できた植物は252種類にのぼる。このうちイノデ、アワブキなどは31年の間に当農場外から分布を拡大したものと考えられ、コウヤコケシノブ、ホクリクムヨウランなどは調査の時期やコースの相違に起因しているものと思われる。(4)植物学上および保護上貴重と思われる植物を6つの選定基準に照らして選び、目録に明示した。そのうちコウヤコケシノブ、ナンブワチガイソウ、トウゴクサイシン、キキョウなど13種類を解説した。またモミ林分、シダ植物群落、草本植物群落の3つを、植物学上、保護上きわめて貴重な群落であることを述べた。(5)当農場の植物相の特徴は(1)早春植物の群落が維持されている。(2)シダ植物が種類、個体数とも多い(3)分布上の諸要素の植物が混在している。(4)宮城県絶滅危惧植物が多く生育している。(6)食産業の素材として利用可能な植物は32科63種類で全種類数の9.9%に相当する。食用としての利用部位別に植物名を列挙した。(7)今後の課題として、調査不足の分類群をはじめコケ類、菌類についても研究を進めるとともに、範囲を農場周辺地域に拡大して調査をすれば当農場の植物相がより明確になる。あわせて、この貴重な自然を保存しながら食産業の素材を開発する研究も望まれる。

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