人種に直面した20世紀の法 --フランスとイタリアにおける本国−植民地間の法制史研究--

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タイトル別名
  • Race and the law in the 20th century : A legal history between homeland and colony in the French and Italian empires
  • 人種に直面した20世紀の法 : フランスとイタリアにおける本国-植民地間の法制史研究
  • ジンシュ ニ チョクメン シタ 20セイキ ノ ホウ : フランス ト イタリア ニ オケル ホンゴク-ショクミンチ カン ノ ホウセイシ ケンキュウ

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説明

本稿は, 法制史が「人種」と社会科学の間で絶えず反射し合ってきた影響を考察する。学問としての法制史は, 「人種」という概念の動員について何を私たちに示唆しているのか?法制史は人文科学と社会科学の研究にどのような貢献をなしてきたのだろうか?法制史の言説研究は, 現代的な人種化プロセスを検出し, 解釈するためにどのように役立つだろうか?本稿は, 19世紀から20世紀におけるヨーロッパのさまざまな法制度のなかの「人種」という概念の動員に焦点を当てることによって, これら問い向き合いたい。とりわけイタリア, フランス, ドイツの法制度に注目する。本稿がア取り扱う法制度は, 1)1930年代-1940年代にユダヤ人に対して発行された法律, 2)混血の個人的地位に関する植民地法である。本稿のアプローチとして, 法的情報源(法律, 教義, 判例法)のなかで「人種」という言葉の明示的な使用を検出できる場合にのみ限定する。この選択によって, 1)法律における人種の意味を理解, 2)この概念に関連する法的活動を検出し, 人種差別化が法律に浸透する方法の理解が可能となる。法的言説は, 「人種」という言葉に完全に特定の一貫性を持たせることにより, 社会科学内の人種的カテゴリーの作成, 安定化, 定着において重要な役割を果たしてきた。人種という概念を可視化させ, 効果を生み出してきたからである。本稿では, 以下の4つの重要なポイントを取り扱う。1.まず「人種」は, そのアプリオリとして, 法的な言説の外側に位置している。とりわけ「人種」は, ナポレオン後のヨーロッパの法律では存在しないと考えられてきた。なぜなら, 単一の法という考えは, 個人の身体的差異とは関係がないからである。しかし混血法とイタリアの反ユダヤ法の両方で, 「人種」という概念は他の科学分野から法的議論に取り入れられることになった。法学者たちのふりをしてきた者たちは, 法的な人種差別化を正当化するために他の科学に依存してきた。2.法的言説への「人種」の導入は, 法外で設計された理論, 教義および研究の選択によって行われてきた。法学者たちは空の容器の中に, 俳優の目的と関心に応じて「人種」に異なる内容を与えてきたのである。3.法学者は, 人間の身体的側面(広義に解釈される)に注意を払ってきた。肌の色, 身体的特徴, 心の状態, 精神, 服装は, 法的言説における人種集団を特徴付けるパラメーターとなってきた。広い意味で, 身体は人種差別化の法的活動の帰属の中心として考えられてきた。4.血液法は, 同じ権利と同じ義務を共有するコミュニティのメンバーシップを定義する卓越した法的基準となってきた。法的言説に人種の概念が含まれた場合, グループまたは特定の集団に固有の特徴としての起源が継承されてきたと考えられてきた。「人種」を使用することにより, 法的言説は権利の享受を本質化してきたのである。

収録刊行物

  • 人文學報

    人文學報 114 97-121, 2019-12-25

    京都大學人文科學研究所

参考文献 (73)*注記

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