<研究ノート>近代日本の人種・人種化論と「国際結婚」言説の変容

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タイトル別名
  • <Research Notes>The transformation of race and racialization theory, and the unchanged "international marriage" discourse in the Japanese empire
  • 近代日本の人種・人種化論と「国際結婚」言説の変容
  • キンダイ ニホン ノ ジンシュ ・ ジンシュカロン ト 「 コクサイ ケッコン 」 ゲンセツ ノ ヘンヨウ

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説明

歴史研究としての「国際結婚」は, 近代国家への帰属問題として考えられ, 19世紀日本における身分制の解体と近代化, 概念と現実の乖離を論じてきた。では「人種化」という構築主義的枠組みと「国際結婚」の関係を検討することで, どのような議論が可能だろうか。文化研究では近年, 「人種」概念と「民族」概念との交差を「混血児」をめぐる言説分析に見出し, 「国民化」の歴史性を描く。しかし戦後・占領期に集中するため帝国日本が抜け落ちる。本稿では試みとしてタイムスパンを長く取り, 方法としての「国際結婚」という立場をとることで「人種」論が「国際結婚」をめぐる言説に役割を果たす歴史性に注目した。この観点はまず, 近代国家の国民化にとって重要な戦略としての「性差」という問題系を浮上させる。19世紀半ばの「国際結婚」論は, あいまいながらも人種論の用語によって, 異性愛主義による近代家族の導入という規範を強い, 日本の社会的慣習でもある「養子」を批判した。同様に, 近代法は「血の論理」を導入することで, ヘテロセクシズムによる家族像を規範としたジェンダー化された論理を持ち, 誰が「国民(「臣民」)の範囲(「分限」)」になるのか, 定義を伴った。次に帝国内部でのインターマリッジとして位置付けられることの多い「婚姻」は, 植民者と被植民者間の境界設定の政治であり, 本国と植民地, あるいは本国と占領地や満洲移民集団も含め, それぞれの社会秩序の柱としての家父長制間での独身の女の交換としての要素を持っていた。第三に, 1930年代以降, 「人種主義」は重要な政治性を帯びた。言説としての「人種」論の本格的な展開は「異民族」支配の過程で新たに必要とされ, 同時に, 従来の東アジアの植民地支配においても再発見され, 組み替えられた。「帝国」の範囲が変化することで, 言説の政治としての「人種論」の緻密さや方法論は変容するが, 「婚姻」という枠組みはそれが「国際結婚」とみなされるのか否かも含め, 歴史性を伴うとともに家父長制下の個々の人々の, 特に制度的には女性の生にその矛盾が集約される構造を伴った。

収録刊行物

  • 人文學報

    人文學報 114 171-186, 2019-12-25

    京都大學人文科學研究所

参考文献 (34)*注記

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