青木ヶ原樹海針葉樹林の動態;林分構造の 13 年間の変化

書誌事項

タイトル別名
  • Dynamics of Aokigahara coniferous forest;changes in the stand structure for 13 years
  • アオキガハラ ジュカイ シンヨウジュリン ノ ドウタイ : ハヤシ ブン コウゾウ ノ 13ネンカン ノ ヘンカ

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抄録

青木ヶ原樹海針葉樹林におけるツガ・ヒノキ混交林の遷移過程とギャップ更新機構を解明するために、2000 年に設置した永久方形区を再調査し、13 年間の植生変化を解析した。方形区内はツガとヒノキの優占する「ツガパッチ」とヒノキ・ツガと落葉広葉樹が混交する「落葉樹パッチ」に区分され、各パッチでの樹木の加入、生残、成長から遷移過程を推定した。「ツガパッチ」の林冠木では、幹の平均肥大成長速度はツガよりヒノキのほうが有意に高かった。また、両調査年での稚樹の個体数は、ツガよりもヒノキが多かった。このことから、「ツガパッチ」はヒノキ優占林へ変化すると推測された。「落葉樹パッチ」では、「ツガパッチ」と同様にツガよりヒノキの方が高い成長を示し、ヒノキは林冠層に達していたが、ツガは達していなかった。また、ヒノキに比べ、ツガの成木(高さ 1.3 m以上)の新規加入数は少なく、成木の枯死数は多かった。このことから、「落葉樹パッチ」の遷移では、ツガ優占林を経ずにヒノキ優占林に変化すると推測された。「落葉樹パッチ」の林冠を形成してい る落葉樹のうち、ミズメの成長速度は林冠の針葉樹よりも有意に高いが、ミヤマザクラの成長速度は針葉樹と有意差がなかった。ギャップに侵入・定着した先駆種の多くは早い段階で衰退するが、ミズメは針葉樹林の林冠木として単木的に残存することができると考えられた。

収録刊行物

  • 富士山研究

    富士山研究 11 35-43, 2017-08-21

    富士山科学研究所

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