教科書の中の話し言葉 : 性差を示唆する終助詞の使用をめぐって

書誌事項

タイトル別名
  • Implications of Representations of Casual Conversation: A Case Study in Gender-Associated Sentence Final Particles

この論文をさがす

説明

男女の言葉遣いの差を表すものの最も顕著なものとして終助詞があげられる。最近では、これまで女性専用とされてきた「のよ」「わよ」等の表現が使われなくなってきており、特に若い女性の間では従来「男ことば」とされてきた表現の使用も見られることを指摘する研究も多いが、教科書の会話では登場人物の年齢に関わりなく女性の発話にはいわゆる「女ことば」が多用されている。本論文は話し手の性を示唆する終助詞の使い方に焦点をあて、中級の教科書の会話と実際の会話データを比べて、教科書中の会話がどの程度実際の言語使用を反映しているか論じる。教科書中の女性話者は実際のデータのどの年齢層よりも女性的終助詞の使用が多く、伝統的な女性のステレオタイプを映し出しているように思える。実際の会話のデータでは年齢が低いほど終助詞の使用も低く、一番若い年齢層の終助詞使用は、教科書中の男性話者のそれとほぼ一致する。また、教科書中の男性話者の終助詞使用は、人物によって、また教科書によって差が見られるのに対して、女性話者はどの教科書でも使える環境では必ず「女ことば」を使うという傾向が見られる。この教科書の会話と実際の言語使用の差は、学習者の学習意欲、文化理解、または母語話者とのコミュニケーションに何らかの影響を与えるものと思われる。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ