学習者言語にみる接続助詞「から」の談話機能の発達

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  • Development of the Discourse Function of the Japanese Conjunctive Partcle kara in Learners' Language
  • ガクシュウシャ ゲンゴ ニ ミル セツゾク ジョシ カラ ノ ダンワ キノウ ノ ハッタツ

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抄録

接続助詞「から」(以下「から」と表す)には、節をつなぐ統語的な機能だけでなく、談話で多く見られる文末使用における終助詞のような機能もある。本稿では日本語学習者の「から」の談話機能が発達する過程を明らかにするために、新しい分析の枠組みを提示し、それに基づいて、学習者の来日直後と半年後の談話資料を母語話者の資料と比較し、その特徴を分析した。主節相当部の位置に注目して「から」の機能を、〈命題〉、〈テキスト1〉、〈テキスト2〉、〈談話管理1〉、〈談話管理2〉、〈表明〉とし、〈命題〉を除く5つを談話機能とすると、全体に占める談話機能の使用割合は、母語話者も学習者も顕著な違いはみられなかった。学習者の縦断比較では、日本語能力低位群でも上位群でも、母語話者の談話機能の使用比率に近づく傾向がみられた。 日本語能力低位群の来日直後の「から」の談話機能は、単文レベルの内容をまとめることと、言語能力を補うための、対話者の推測を喚起する標識となることだと思われる。 滞日期間での発達は、発話が並列的に長くなる方向に進み、意味解釈は聞き手に依存する。上位群では来日直後に、複数の接続表現がはいる、より複雑な内容をまとめる機能と、文レベルの長さを相手に働きかける機能を持っている。半年の滞日期間による「から」の談話機能の発達は、共話構造の複層化のはじまりや、接続詞との組み合わせによる論旨の明確化、などである。どちらも、ひとつの話題についての複数の発話からなるテキストを、接続詞などの他の接続表現と組み合わせてまとめる機能である。また、共話や談話展開などコミュニケーションの場をつくるストラテジーとして機能している。 以上の結果から、「から」の談話機能の発達は、 (1)まとめる機能: 単文→ 複文(並列)→複文→テキスト、(2) 相手依存→自己完結→共話→共話の複層化となると予想される

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