ブラジル人中学生の第 1 言語能力と第 2 言語能力の関係: 作文のタスクを通して

書誌事項

タイトル別名
  • Interrelationship between the First-and Second-Language Proficiency in Written Compositions by Young Brazilian Learners of Japanese as a Second Language
  • ブラジルジン チュウガクセイ ノ ダイ1 ゲンゴ ノウリョク ト ダイ2 ゲンゴ ノウリョク ノ カンケイ サクブン ノ タスク オ トオシテ

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説明

本稿は日本の学校に在籍するブラジル人中学生を対象に、作文のタスクを通して第 1 言語 (L1) であるポルトガル語と第 2言語 (L2) である日本語の関係を観察したものである。 年少者の L1能力と L2能力の関係は、文法面や音声面の能力よりも、一般的な認知能力を必要とする読解力や文章能力においてより強いとされている。 これらの結果は、Cummins の提唱した「2言語に共通に働く基底言語能力があり、一方の言語で身につけた能力はもう一方の言語に移行する」という「二言語相互依存説」を支持するものである。 本稿では作文能力を「産出量」「語彙の多様性」「文の複雑さ」「正確さ」「文章の構成」に下位分類し、いずれの側面において 2言語間の関係が強いかを分析した。その結果「産出量」「語彙の多様性」「文章の構成」は 2言語間での相関があり、「文の複雑さ」「正確さ」は 2言語間の相関が無いことがわかった。さらに、誤用を観察した結果、言語形式の大きく異なるポルトガル語と日本語の間でも、文法・語彙レベルの干渉が起こることもわかった。 これらの結果から、作文能力の中でも 2言語間での相関のあった「産出量」「語彙の多様性」「文章の構成」という側面は共通基底言語能力を反映するものであること、2言語間で相関の見られなかった「文の複雑さ」「正確さ」は個別の言語知識を反映するものであることを指摘した。そして作文能力が共通基底言語能力に支えられていることから、L1 においても作文能力を伸ばしていくことが L2の作文能力の養成にも有効であると主張した。

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