「責任重視型」日本語対「意図重視型」インド諸語:非意図的な出来事の認知的対照研究

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  • Responsible Japanese vs. "International" Indic:A Cognitive Contrast of Non-intentional Events

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抄録

本稿は以下の二つを目的とする。(1)日本語における非意図的な出来事を他動詞で表しうる表現[例: 太郎がお腹を壊した、人ごみの中で財布を落とした等]の包括的な記述を行なうこと、(2)典型的な「なる」言語と言われている日本語において他動詞で表現されるこれらの「する」型な表現がなぜ許され、 数多く存在するのかという根本的な疑問に対して説明を提案すること、の二つである。このような説明を提案するにあたって、インド諸語との比較対照を行なうという方法を取る。なぜならば、日本語とは対照的に、インド諸語においてはこれらの出来事は主に自動詞で表現される。これによって当現象の対比がより鮮明に検証できると考えられるからである。 当表現において日本語とインド諸語の間に見られる言語形式の類似・相違は、対象としている出来事の概念化の類似・相違に由来するものだと主張する。 さらに外界における同一の事態に対し、言語間に見られる概念化の違いは社会的・文化的な要素に左右されるものだと主張し、日本語はインド諸語と比べ 「責任」という概念に対して、相対的により敏感であること、またインド諸語は日本語と比べ「意図性」 という概念に対して、相対的により敏感であることを明らかにする。外国語を勉強する者は文法のみならず、さらに自然な外国語を話すために、その言語や文化特有の物事の見方や概念化をマスターしなければならないことを提案する。言語は従来考えられてきた「する型」対「なる型」、「人間中心型」対「状況中心型」といった二分的なものではなく、程度の差を持つ連続体であることを主張する。

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