<論説>知識の翻訳・生産と身体政治 --中国初の西洋産婦人科専門書『婦嬰新説』を中心に-- (特集 : ジェンダー)

書誌事項

タイトル別名
  • <Articles>Knowledge Translation, Production, and Body Politics: Focusing on Chinaʼs First Western Obstetrics and Gynecology Treatise Fuying Xinshuo (Special Issue : Gender)
  • 知識の翻訳・生産と身体政治 : 中国初の西洋産婦人科専門書『婦嬰新説』を中心に
  • チシキ ノ ホンヤク ・ セイサン ト シンタイ セイジ : チュウゴク ハツ ノ セイヨウ サンフジンカ センモンショ 『 フエイシンセツ 』 オ チュウシン ニ

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抄録

本稿はイギリスの宣教医であるホブソンの「西医五種」の一冊であり、中国初の西洋産婦人科専門書である『婦嬰新説』を取り上げ、それが何を如何に伝え、如何なる知識体系を構築し、当時の中国に如何に受けとめられたかをジェンダー視点から検討する。西洋医学の伝播と受容についてはすでに多くの研究があり、それらの研究は、従来の西洋医学の衝撃と中国知識人の対応のほかに、近年では、知識の翻訳・生産及び社会化過程における適応・交渉という視点、さらには、中西医学の知識及びそれに絡む身体観などの視点からの研究が増えつつある。本稿もこうした視点を受け継ぎ、まず『婦嬰新説』が西洋医学の先進的と思われる医療器具や手術を翻訳しなかったことを突き止め、ついで『婦嬰新説』には医学知識の外に、西洋近代的身体・ジェンダー観及び道徳・神学などの内容も多く含まれていたことを指摘し、さらに『婦嬰新説』は刊行後、それほど「衝撃」的なものと受け止められていなかった原因を分析し、『婦嬰新説』の翻訳と伝播を文明の覇権をめぐる身体政治から考察する。

収録刊行物

  • 史林

    史林 104 (1), 78-112, 2021-01-31

    史学研究会 (京都大学大学院文学研究科内)

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