浮舟入水から物語結末に至る構想の連関について : 『源氏物語』作者と浮舟の思考の類同性に着目して

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  • ウキフネ ジュスイ カラ モノガタリ ケツマツ ニ イタル コウソウ ノ レンカン ニ ツイテ : 『 ゲンジ モノガタリ 』 サクシャ ト ウキフネ ノ シコウ ノ ルイドウセイ ニ チャクモク シテ

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浮舟が運命に押し流される姿について、それを追求する作者の技法の特質に着目し、投身にまで思い至る行為がそうでしかありえないかたちで促されることの指摘がなされるが、そうした浮舟の追いつめは右に指摘した点から巻当初より意図されていたといえる。その確認の上で、前稿で明らかにしたように、「宿木」巻において薫に対する作者の心情的寄り添いが認められる点に注目したい。それは薫中心に物語の流れを保とうとする姿勢の現れであり、またその姿勢はあくまで彼に求道の姿を維持・回復させようとする点にあったと推測される。そうした営みを促す方向で物語が進められていたと考えるのである。その点を勘案すると、物語が選び取っていく浮舟の入水はそれ自体で終わるのでなく、その行為が導くその後の薫をめぐる出来事を射程に入れていたと考えるべきではないか。更に、そうした構想に沿って辿られる浮舟の行動には、この執筆時点の作者の思いの反映があり、そのことが物語の方向を決定づけていくものと考えられる。以下にその事情を明らかにしたい。

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