国際産業連関モデルに基づく日中貿易構造の実証研究

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タイトル別名
  • An Empirical Study of Japan-China Trade Structure Based on the International Input-Output Model
  • コクサイ サンギョウ レンカン モデル ニ モトズク ニッチュウ ボウエキ コウゾウ ノ ジッショウ ケンキュウ

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抄録

本論文の目的は,中間財貿易を通じた日中経済の相互依存関係の実態を明らか にし,日中貿易が両国経済の各産業部門に与える影響の大きさを分析することで ある.具体的には,『2012 年日中国際産業連関表』の研究開発を検討した上で, 表のデータを用いて日中貿易構造の実態を考察した.また,国際産業連関モデル によって日中貿易が両国経済に与える影響について計量分析した.さらに,日本 や中国の日中貿易に与える影響が大きい産業部門の技術構造の特性を明らかにし た.主な結論は次のようなものである.日本から中国への輸出で中間財輸出の割 合は約7 割を占めている.中間財貿易については,多くの産業部門で日中双方向 の貿易が行われているが,日本から中国に向けた輸出が多い.投資財貿易につい ては,機械関係の財を中心とする双方向の貿易が盛んに行われている.最終需要 財貿易についての日本の中国への輸出は少ないが,日本の中国からの輸入が多い. また,中国から日本に向けた最終消費財貿易の中に4 割以上が衣服,繊維,革製 品関係のものである.総じて,日本の中国への輸出は「69 電子部品(半導体・IC 等)」や「60 事務機・精密機器」など高付加価値の産業部門に集中している.こ れに対して中国の日本向けの輸出はほとんど付加価値がそれほど高くない産業部 門に集中している.現状では,日本の対中貿易が赤字であり,中国の対日貿易が 黒字である.日本のサービス業の産業部門の生産は国内で高い付加価値額を誘発する.日本 の製造業部門の生産は中国国内で高い付加価値を誘発することができる.経済発 展がある程度進んでいるものの,農林水産業各産業部門が中国経済に与える影響 は依然として無視できない.機械関係の産業部門の生産は日本から輸入した中間 財を多く使用している.日本の中間財としての対中輸出で,複雑な生産技術を要 する「69 電子部品(半導体・IC 等)」の割合は最も高い.中国の対日輸出割合で は,第一位が最終消費財としての「25 衣服」の対日輸出である.また,中国の対 日輸出は主として低付加価値部門の中間財としての輸出に依存しており,多くの 財の生産技術もそれほど複雑ではない.対日輸出の中間財の中で生産技術が最も 複雑であるのが輸出割合で第二位の「70 電子計算機・同付属装置」である.

収録刊行物

  • 経済学季報

    経済学季報 69 (4), 1-35, 2020-03-30

    立正大学経済学会

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