小中連携・一貫カリキュラムとしての総合的な学習の時間の現状と課題(2)

書誌事項

タイトル別名
  • The Current State and Issues in the Nine-year Education at Combined Primary Schools and Lower Secondary Schools in the Integrated Learning Curriculum(2)
  • ショウ チュウ レンケイ ・ イッカン カリキュラム ト シテ ノ ソウゴウテキ ナ ガクシュウ ノ ジカン ノ ゲンジョウ ト カダイ(2)

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抄録

「総合的な学習の時間(以下、「総合的学習」と略する)」は、知識教え込みの教育ではなく、子どもが自ら設定した課題などについて横断的・総合的な課題や学習を行う時間であり、情報を収集・整理・分析し、成果を発信する活動を通じて、これからの社会の中で自分の生き方を考えることのできる力を養うことが目指されている。確かに、今回の学習指導要領改訂により、各学校の実態としては、むしろ主要教科の学力向上が重視され、「総合的学習」が軽視される傾向がないわけではない。しかし、「総合的学習」は、本来、自分の生き方を考え、自分たちの生活や社会を創造する力を育むという、教育の根本にも関わる重要な意義を有する活動でもある。  この「総合的学習」に関して、学習指導要領では、小学校・中学校・高校とも、他の教科と異なり、目標や内容の取り扱い等、基本的にはほぼ同じ記載となっており、特に校種相互の関連が大きい。その意味で、少なくとも小・中・高のライフサイクル全体を通じたカリキュラムの一貫性が強く要請される学習活動であるといえよう。  前稿で述べたように、近年、教育における規制緩和や特色ある学校づくりが標榜されるなかで、一連の中央教育審議会での議論、文部科学省による研究開発学校制度および教育課程特例校制度などの活用や、国が策定した第一期『教育振興基本計画』(2008〔平成20〕年7月1日閣議決定)の中でも示されるように、公立学校において、多様な小中連携、小中一貫教育が模索されている。  特に、義務教育9年間でみた場合、「総合的学習」に限ってみても、公立小中一貫カリキュラムの存在、学習活動における連携の程度、小中での教師間の連携や教職員の意識、地域の位置づけ、自治体や教育行政が果たす役割など、多くの論点がある。また、「総合的学習」における小中連携・一貫教育の実態、その成果と課題は何なのか。そもそも、「総合的学習」における小中連携・一貫の必要性の是非も含めて、多くの検討課題が存在する。  「総合的学習」に関する小中9年間の連携・一貫教育の先駆的な取り組みには、東京都品川区の「市民科」、茨城県つくば市の「つくばスタイル科」、青森県三戸町の「立志科」などがある。また、青森県東通村では、もともと行政が主体となりながら、その後は学校の裁量に委ねる形で、地域を核にした小中一貫の「総合的学習」カリキュラムとしての「東通科」が設置されている。その他にも、全国的ないくつかの特色ある取り組みが存在する。  本稿では、独自の小中一貫「総合的学習」カリキュラムを有する公立小中一貫教育校のうち、東北地方において比較的早い段階から小中一貫カリキュラムの検討と実践に取り組んでいる、青森県東通村立東通小・中学校の「東通科」について、その実践状況と現時点での成果と課題をまとめてみたい。それを踏まえて、小中一貫の「総合的学習」カリキュラムの妥当性を考える手がかりとしたい。

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