『骨董店』における野蛮と文明の表象

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タイトル別名
  • The representation of savagery and civilization in the old curiosity shop
  • Representation of Savagery and Civilization in The Old Curiosity Shop
  • 骨董店における野蛮と文明の表象

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説明

ディアドレ・ディヴィッドは、『骨董店』の分析において「野蛮な」クウィルプと「文明化された」ネルという二項対立に着目し、ネルの苦しみは野蛮人の脅威の下に苦しむイギリス人女性の苦しみであり、クウィルプは彼女の犠牲によってのみ制御されうる「暗い野蛮な力」(63)を象徴していると論じている。けれども「野蛮な」クウィルプ=被征服者の象徴と捉え、文明を代表するネルと対比させるディヴィッドの論はこの小説をやや単純化して解釈しているように思われる。そこで「野蛮」と「文明」の表象を再検討し、ディヴィッドの論を修正するのが本論の目的である。『骨董店』は、文明は外界の自然に対する勝利であると同時に、人間の基本的性質に対する勝利として捉えられていた時代に書かれた。1830年代後半から1840年代前半のイギリスはしかしながら、このような信念とは裏腹に経済的、社会的、政治的危機に瀕した混乱と混沌の時代であった。本論では、ディケンズがそのような時代を背景に、文明を野蛮との対立によってではなく、野蛮との分かちがたい関係によって捉え、文明という概念を再定義したことを検証する。また、彼が人間的感受性にもとづいた調和的な文明発展の可能性を、テキストで呈示していることを明らかにする。最後に当時の批評を検討し、作品が同時代の読者に与えた影響を検討する。

収録刊行物

  • 言語文化

    言語文化 8 (4), 739-760, 2006-03-10

    同志社大学言語文化学会

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