イタリア大都市における地区行政の展開 : トリノ市第2地区を手がかりに

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タイトル別名
  • The development of district government in a metropolitan city of Italy : a case study of district 2 in the city of Torino
  • イタリア ダイトシ ニオケル チク ギョウセイ ノ テンカイ : トリノシ ダイ2 チク オ テガカリ ニ

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抄録

わが国では現在、大都市制度改革が進行し、そのなかで都市内分権がひとつの論点となっている。実はイタリアでは1970年代から、とりわけ大都市では市内に「地区」を設定し、ここに行財政権限の一部をゆだねて都市内分権を実践してきた経緯がある。もちろん、わが国とイタリアの地方自治制度のちがいには留意を要する。しかし、たとえば政令市が今後にいっそう行政区への都市内分権を進めるのであれば、イタリア大都市の経験から得られる示唆も少なくないのではないか。このような問題関心のもと、本稿ではトリノ市を例に、地区行政の展開について検討していく。トリノ市は1990年代から脱工業化を推し進め、都市再生の先進都市に生まれ変わった歴史を持つ。市内は10地区に区分され、それぞれに地区住民評議会と地区センターが置かれている。本稿はこの10地区のなかでも、第2地区に絞って検証を進めた。その結果、トリノ市本庁から地区センターに対しては、必ずしも大胆な権限委譲が進んでいるとはいいがたく、地区予算も現在は縮減している実態が把握された。他方で、地区センターは単なる出先機関にとどまらず、職員は地区住民をはじめ多様な主体に地区活動への参加を促し、ラウンドテーブルを通じた主体間の連携も促進していた。また、地区住民評議会とも連携しつつ、独自のプロジェクトを立ち上げて実践し、地区内の問題状況の改善にも取り組んでいる状況が確認された。このような動向をふまえ、今後の研究ではわが国との比較・考察も視野に入れながら、個別の論点に関するより詳細な分析を進めていきたい。

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