導く星のもとで : 人権と法源についての試論

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  • ミチビク ホシ ノ モト デ ジンケン ト ホウゲン ニツイテノ シロン

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抄録

本稿は、地震などの天災の際に登場する法が停止する(もしくは、「特別法」が施行される)非常事態における人権概念の根拠(法源)を、ヴァルター・ベンヤミンとカール・シュミットの思想を取り上げながら検討したものである。ここで、私は、国家を法制度や主権を超えた存在であると考えるシュミットの思考を、法の停止状態の内部において自らの生存の根拠となる予言を探るベンヤミンの思考の参照項として設定している。また、ベンヤミンの思考について、占星術あるいは予言といった従来のベンヤミン研究においてはあまり注目されなかった側面に光を当てている。この作業を通じて、私が問いたいのは、非常事態における人権(生存権・所有権)を、先取り的に保障したり、事後的に救済したりすることによって、すぐさまに「原状回復」できる国家福祉論において語ること自身が帯びる暴力性、ということである。これは、自然災害の多発、難民の拡大などといった、決して今に始まったことではない、非常事態の常態化にかかる緊喫の世界史的課題と言えるのではないだろうか。

収録刊行物

  • 人権問題研究

    人権問題研究 16 27-45, 2019-03-31

    大阪市立大学人権問題研究センター

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