人文科学・自然科学博物館の歴史の違いと現在の博物館教育への影響について

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  • ジンブン カガク シゼン カガク ハクブツカン ノ レキシ ノ チガイ ト ゲンザイ ノ ハクブツカン キョウイク エノ エイキョウ ニツイテ

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抄録

美術館は博物館の一形態である。日本において博物館は, 明治期に近代国家形成のための装置として輸入された。そして教育行政と勧業の両面で, 近代社会の発達と共に活動を展開した。博物館の目的や機能は, 1951年に成立した, 博物館法において定義されている。しかし, 博物館教育の理念にはすべての博物館を統一するような定義がない。そのため博物館教育は, 自然史博物館や科学館, 動物園, 植物園, 水族館などの自然科学系博物館と, 歴史博物館, 美術館などの人文博物館とが別のものと認識されている。さらに学芸員の教育理念や教育能力にも共通した基準は存在せず, 異分野の博物館同士が, 博物館教育について議論や交流する機会は極めて少ない。したがって両者を比較した研究も少ないことから, 「博物館教育」を定義することを困難にしている。そこで, 本稿では自然科学系と人文科学系の博物館, 『東京国立博物館百年史』『国立科学博物館百年史』の比較検討をおこなう。東京国立博物館は, 「富国強兵」「殖産興業」を推し進める博覧会を実施する内務省系博物館として発展した。一方, 国立科学博物館は「文明開化」による学校教育の実施支援を行う文部省系博物館として出発している。異なる使命を担い発展してきた両館は, 国内の多くの博物館へ影響を与え続けてきた, いわば我が国の博物館の象徴的存在である。2系統の博物館の発展経緯の中で, 特に博物館教育の理念の構築と具体的取り組みに注目し, 明治から現代までの変遷を辿るものとする。以上の文献調査を元に, 博物館教育が分化した起点を明らかにし, 現代へ引き継がれた博物館の教育活動の理念と課題について報告する。

収録刊行物

  • 都市文化研究

    都市文化研究 23 133-143, 2021-03

    大阪市立大学大学院文学研究科 : 都市文化研究センター

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