図画工作・美術科目が持つ、JSL児童生徒の言語能力育成の場としての可能性

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  • The Potential of Art Classes for Developing the Language Proficiency of Students Studying Japanese as Their Second Language

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抄録

本稿は、筆者が2015年アメリカ合衆国シアトルの中等教育機関で行ったフィールドワークで得た知見をもとに、図画工作・美術科目が言語教育の場として持つ可能性を検討するものである。国籍を問わず、日本の学校教育を受けるために第二言語として日本語を学ぶ必要がある児童生徒(JSL児童生徒)の数は年々増えつつある。彼らは日本語と同時に学齢相当の教科内容を日本語で学ばなければならないという点で、大きな困難を抱えている。彼らに対する日本語指導と教科指導を統合した指導法の確立が求められている。2000年代に入り、文部科学省が「JSLカリキュラム」を開発するなど、徐々に日本語指導と教科指導の統合は進みつつあるが、その中心はいわゆる主要4 科目ないし5科目であり、図画工作・美術や音楽などの科目については、上記科目に比べて体験型であり、日本語使用の必要性があまり高くないということも あってか、日本語指導が取り入れられていないようである。しかし、筆者がフィールドワークを行ったシアトルワールドスクールでは、全ての科目において、英語学習者(ELL)のための「sheltered instruction」と呼ばれる指導法が採用され、科目の内容を学びながら英語の能力を伸ばせるようにデザインされていた。美術のクラスもそのーつである。本稿では、この美術のクラスの実践を取り上げ、その言語能力育成のための工夫を紹介する とともに、日本の図画工作美術科目への応用方法を検討し、これら科目に日本語学習を取り入れることを提案する。最後に、この提案が、「学習指導要領」をはじめとした文部科学省の方針にも合致することを述べる。

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