奈良盆地北部におけるセミの種構成と植生率の関係

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タイトル別名
  • Relationship between habitat selection of cicada and vegetation ratios in the northern part of Nara Basin Japan
  • ナラ ボンチ ホクブ ニ オケル セミ ノ タネ コウセイ ト ショクセイリツ ノ カンケイ

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抄録

植生、すなわち周辺の市街地率、森林率、耕作地率の違いとそれらの変化がセミ種の分布パターンや生息地の選好性にどのように影響をあたえているのか明らかにすることを目的とし、セミの抜け殻を計数する調査を行った。6度の野外調査を行い、アブラゼミGraptopsaltria nigrofuscata 908個 (全体の46.0%)、クマゼミCryptotympana facialis 331個 (16.8%)、ミンミンゼミHyalessa maculaticollis 273個 (13.8%)、ツクツクボウシMeimuna opalifera 142個 (7.2%)、ニイニイゼミPlatypleura kaempferi 138個 (7.0%)、ヒメハルゼミEuterpnosia chibensis 106個(5.4%)、ヒグラシTanna japonensis 78個 (3.9%)、合計で7種1,976個の抜け殻を計数した。クマゼミは市街地率と耕作地率が高いほど抜け殻数が多く、逆に森林率が高いほど抜け殻数が少なかった。ツクツクボウシ、ヒグラシ、ヒメハルゼミ、ミンミンゼミは森林率が高いほど抜け殻数が多く、逆に耕作地率や市街地率が高いほど抜け殻数が少なかった。アブラゼミ、ニイニイゼミの抜け殻数は植生率との関係が明瞭でなかった。本研究から、近年の急速な都市化の進行が今後も続くとすれば、多くのセミ種の生息適地が減少し、一方で市街地を主な生息場所として生息できるクマゼミの個体数が増加することで、セミの種構成が単純化していくことが予測される。したがって、都市においてセミの種多様性を守るためには、都市域での緑地、特に樹林を増やすことが重要になってくることが示された。

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