無線操作による急傾斜草地の除染技術開発

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  • Remediation of steep grasslands using a radio-controlled crawler tractor
  • ムセン ソウサ ニ ヨル キュウケイシャ クサチ ノ ジョセン ギジュツ カイハツ

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抄録

<p>放射性セシウムに汚染された牧草地においては除染作業を兼ねた草地更新が進められた.しかし,機械作業が困難な傾斜地を永年草地として利用している場所では,作業機が転倒する危険性があるため,草地更新は困難であった.そこで,15 ~30°の急傾斜草地の草地更新作業を低重心の無線で操作する傾斜地用トラクタ(以下,「無線傾斜地トラクタ」という)で行う技術を開発した.無線傾斜地トラクタは河川敷の草刈りに利用されており,最大100 m 離れて操作でき,無線が届かないと自動停止する.装着できるロータリを松山株式会社と共同開発したことにより,製品化されているフレールモーア,散布性能を確認したブロードキャスタ,試作したローラと組み合わせて,前植生の刈払い,施肥,耕うん,播種,鎮圧の一連の草地更新作業が遠隔作業で安全に実施できるようになった.開発したロータリは地表の凹凸の追従性が高く,丁寧に耕うんができ,石礫に当たっても耕うん爪が折れにくい特徴を有する.実証試験において,草地の空間線量率は除染前の約70% に,翌年の牧草の放射性セシウム濃度は未除染の場合と比べて37 ~78% に低減した.その一方で,石礫が多い草地では,ロータリに石がつまることにより,作業効率が著しく低下する場合があった.4 箇所の実規模草地での一連の草地更新の作業時間は,10a 当たり4.05 時間であった.この作業体系は草地除染の事業にも採用され,栃木県,福島県,宮城県,岩手県の公共牧場などの急傾斜草地の除染に活用され,草地の利用再開に貢献した.全国には急傾斜が原因で十分な草地管理が行えず植生悪化や生産性低下に陥っている草地があり,この作業体系はこれらの草地の草地管理にも利用できる.</p>

収録刊行物

  • 農研機構研究報告

    農研機構研究報告 2021 (8), 35-41, 2021-10-31

    国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構

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