胎児不整脈を伴った左室心室憩室の1例

  • 宇田 葉子
    京都府立医科大学大学院医学研究科女性生涯医科学
  • 馬淵 亜希
    京都府立医科大学大学院医学研究科女性生涯医科学
  • 田中 佑輝子
    京都府立医科大学大学院医学研究科女性生涯医科学
  • 藁谷 深洋子
    京都府立医科大学大学院医学研究科女性生涯医科学
  • 北脇 城
    京都府立医科大学大学院医学研究科女性生涯医科学

書誌事項

タイトル別名
  • A case of congenital left ventricular diverticulum with premature ventricular contraction
  • タイジ フセイミャク オ トモナッタ サシツ シンシツ ケイシツ ノ 1レイ

この論文をさがす

抄録

<p>左室憩室や左室瘤は心形態異常の1つで,最近では胎児期に超音波検査で診断される例もいくつか報告されている.まれな疾患のため,妊娠管理方法や分娩様式,治療方法について確立されたものはない.今回われわれは,心室期外収縮を伴った胎児左室憩室の1例を経験したので報告する.31歳,2妊1産.自然妊娠成立し前医にて妊娠管理が行われていた.妊娠28週時に胎児不整脈を指摘され,さらに妊娠30週時に経腹超音波検査で左室近傍にlow echoic areaを認めたため,精査目的に当院紹介受診となった.当院の経腹超音波検査で胎児不整脈はPVC(心室性期外収縮)と診断した.また,左室心尖部から突出する26.4×12.0 mm大のlow echoic lesionを認め,左室憩室または心室瘤が疑われた.その他明らかな異常所見は認めなかった.その後,突出腔のサイズは急激に増大することなく経過した.経腟分娩を予定したが,妊娠38週0日胎児不整脈のため胎児心拍モニタリングが困難となり,妊娠38週1日帝王切開術を施行した.児は男児,体重2556g,Apgar score1分値9点,5分値9点であった.児は出生後もPVCが散見されたが,生後2週間で自然消失した.生後4日で経腸栄養量が安定し,血栓予防目的にアスピリン投与を開始とした.MRI検査,心臓カテーテル検査を実施し,左室憩室と診断した.左室の収縮は良好で心不全徴候は認めなかった.母体の術後経過は良好であり,術後9日目に退院となり児は出生後50日で退院となった.児は現在,生後6か月で外科的介入が必要となるような合併症や心不全等の出現なく,アスピリン服薬のみで外来経過観察中である.左室憩室や左室瘤は,胎児期において胎児水腫や心破裂,子宮内胎児死亡の危険性がある.そのため厳重な胎児評価を行いながら,分娩時期を判断し,出生直後の状態変化にも対応できるよう,小児科とも連携して分娩を計画する必要がある.〔産婦の進歩74(1):58-63:2022(令和4年2月)〕</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ