補中益気湯はバンコマイシン耐性腸球菌の陰性化までの期間を短縮する

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抄録

新規抗菌薬の開発は年々減少傾向にあることから,薬剤耐性菌への対策が重要視されている.1996年に我が国でバンコマイシン耐性腸球菌(vancomycin-resistant enterococci: VRE)が初めて検出されて以降,2005年の京都をはじめ,数年に1件程度のアウトブレイク事例が報告されている.現時点においてVRE治療薬はリネゾリド等に限られているが,近年漢方薬がVRE治療に対する新たな治療戦略として注目されている.<br>漢方薬には腸管免疫を促進する作用を示すものや,プロバイオティクスの効果を増強するものがあり,感染症治療における有用性が期待される.体力低下,疲労倦怠感,食欲不振などに伝統的に用いられる漢方薬である補中益気湯(HET)は,宿主の免疫機能賦活作用による感染防御作用も併せ持つことから,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus: MRSA)感染に対する作用が検討されてきた.例えばMRSA感染モデルマウスにHETを投与することで生存期間が延長したとの報告や,患者に10週間HETを投与することで尿中MRSAを有意に減少させたとの報告がある.一方,プロバイオティクスの投与がVRE除菌に有用であったとの報告もあるが,HET等の漢方薬やプロバイオティクスのVREに対する効果に関するエビデンスは限られている.本稿では,VREに対するHETの有用性およびプロバイオティクスの併用効果について検討した臨床研究を紹介する.<br>なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.<br>1) Matsui K. et al., Kampo Med., 48, 357-367(1997).<br>2) Nishida S., J. Infect. Chemother., 9, 58-61(2003).<br>3) Szachta P. et al., J. Clin. Gastroenterol., 45, 872-877(2011).<br>4) Kohno J. et al., Sci. Rep., 11, 11300(2021).

収録刊行物

  • ファルマシア

    ファルマシア 58 (3), 265-265, 2022

    公益社団法人 日本薬学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390291767478170496
  • NII論文ID
    130008165780
  • DOI
    10.14894/faruawpsj.58.3_265
  • ISSN
    21897026
    00148601
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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