<i>FA2H</i>遺伝子の新規変異が原因であった遺伝性痙性対麻痺35型の1例

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  • Hereditary spastic paraplegia type 35 caused by a novel <i>FA2H</i> gene mutation

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抄録

<p> 遺伝性痙性対麻痺 (SPG) は遺伝子座が同定されたものだけでも60以上のサブタイプがあるが, その中でもSPG35型は稀である. 我々は3歳で発症し, 19歳時に診断しえた, SPG35の症例を経験した. 患児は3歳から痙性対麻痺の進行を認め, 7歳で当院紹介. 頭部MRIでは軽度の小脳と脳幹の萎縮を指摘されたが, 末梢血・血液生化学検査, 尿検査, 血液ガス分析, 脳波, 体性感覚誘発電位, 下肢末梢神経伝導検査で異常は認めなかった. その後痙性麻痺の進行と知的退行が出現した. 19歳時に小児希少・未診断疾患イニシアチブの研究に参加した. トリオによる全エクソーム解析が行われ, fatty acid 2-hydroxylaseをコードする遺伝子FA2Hに新規変異 (NM_024306.5 : c.137dup [p.Glu47Argfs*55]) をホモに認め, 診断が確定した. 父親の解析では変異をヘテロで認めており, 父由来の片親性ダイソミーと考えられた. 放射線科医と後方視的に検討したところ, 19歳時の頭部MRIでT2強調画像での両側淡蒼球の低信号を認めた. 遺伝性痙性麻痺においては特徴的症状の出現時期や頻度にばらつきがあるため, 特異的な徴候が出現していなくても示唆する症状が複数認められる場合は鑑別疾患の上位に挙げるべきである. その際には網羅的遺伝子解析を含めた確定診断を早めに考慮するべきと考えた.</p>

収録刊行物

  • 脳と発達

    脳と発達 54 (1), 46-50, 2022

    一般社団法人 日本小児神経学会

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