地方公会計における情報利用者の実態と決定要因

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  • チホウ コウカイケイ ニ オケル ジョウホウ リヨウシャ ノ ジッタイ ト ケッテイ ヨウイン

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抄録

<p> 本稿の目的は,わが国地方公共団体の財務担当者が想定する情報利用者を特定すること,そしてその決定要因を実証的に明らかにすることであった。 わが国地方公共団体には2017年度から統一的な基準にもとづく公会計情報の作成が総務省から要求されているが,作成された会計情報はだれがどのように活用可能かについて検討がなされているところである(総務省,2016)。一方,すでに発生主義会計が各州や地方公共団体において導入されている米国では,会計基準の策定にあたり,政府会計基準審議会(Governmental Accounting Standards Board: GASB)が財務報告書に対する情報利用者のニーズについて,財務担当者および利害関係者を対象として丹念に調査をおこなっていた(Jones, Scott et al., 1985)。</p><p> そこで本稿は,地方公共団体が負債を多く抱えている場合(負債仮説),市民から公共財に対する需要が大きな場合(公共財仮説),首長が財務諸表を活用した経験を有する場合(上層部仮説),地方公共団体の財務担当者は,外部者が情報利用することを想定して情報開示の方策を積極的に検討すると予想した。1,788地方公共団体の財務担当者を対象に質問紙調査を実施した結果,地方公共団体の財務担当者が想定する公会計情報の主な情報利用者は政府関係者(総務省・中央政府や首長,議員)であること,また因子分析の結果,情報利用者は政府関係者とそれ以外の情報利用者に大別できることを発見した。さらに,納税者,寄附者,受益者といった情報利用者が会計情報を使用すると財務担当者が想定している地方公共団体は,首長が企業役員の経験を有することがわかった。これは上層部仮説を部分的に支持するものであった。</p>

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