公企業における監査の現状と課題 -公企業における外部監査の目的と地方公営企業への外部監査導入に向けて-

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  • 藤岡 英治
    大阪産業大学経営学部・大学院経営流通学研究科

書誌事項

タイトル別名
  • コウキギョウ ニ オケル カンサ ノ ゲンジョウ ト カダイ : コウキギョウ ニ オケル ガイブ カンサ ノ モクテキ ト チホウ コウエイ キギョウ エ ノ ガイブ カンサ ドウニュウ ニ ムケテ

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抄録

<p> 「企業」と名の付く公企業は,公共性(公共の福祉の増進)と経済性(企業性の発揮)の両面が求められている組織体である。その公企業の中で地方公共団体の内部組織である地方公営企業は,企業会計と同等の地方公営企業会計を採用し,公共性と経済性の衝突が強く生じる組織体である。近年では経営悪化に伴い,地方公共団体の他会計からの多くの繰出金の拠出の発生や民営化などによる経営形態の移行などの問題に直面している。</p><p> 多くの公企業においては,社会的説明責任を果たすために,公認会計士または監査法人による外部監査が法定または任意で実施されているが,地方公営企業においては,その経済性を測定する情報の信頼性を確かめる公認会計士または監査法人による外部監査は実施されていない。</p><p> そこで本稿では,地方公営企業における外部監査の導入を念頭に置き,外部監査がすでに実施されている公企業における外部監査の実施状況を整理し,その整理から公企業における外部監査の課題を抽出している。その課題には,公企業における外部監査は保証業務であるか否か,また,監査証明業務であるか否かについてまず検討している。この検討から,公企業における外部監査の目的を明らかにするとともに,地方公営企業における外部監査のあり方,すなわち地方公営企業を取り巻く限られた想定利用者である地方公共団体の長,議会,そしてその背後の市民や住民による監督等の機能の一環としての監査類似業務である外部監査(限定した想定利用者に対する説明責任のための外部監査,ガバナンス体制の強化のための外部監査)と位置づけている。さらに,社会福祉法人における公認会計士または監査法人による外部監査と所轄庁による指導監督との連携事例をもとに,現行の地方公営企業における監査委員監査や外部監査契約に基づく監査と連携する外部監査の活用について提起をしている。</p><p> 公企業における公認会計士または監査法人による外部監査は,これまであまり研究対象とされてこなかった。この公企業における監査研究の中心は,会計検査院の検査,監査委員監査および外部監査契約に基づく監査(包括外部監査・個別外部監査)の研究が主であった。本稿の検討は,公企業さらには非営利組織体やパブリックセクター全般にわたる監査論研究の一助となることを目指している。</p>

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