山形県で発生した白穂に対するフェーンの影響

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  • The effects of foehn winds on white head incidences in Yamagata Prefecture

抄録

<p>白穂とは水稲の穂が白く枯れる現象で、夜間に吹く高温で乾燥した強風によって引き起こされる。これまでの白穂の原因調査のほとんどが、白穂を引き起した高温乾燥強風はフェーンであったと結論づけてきた。しかしながら、それらはどれも白穂発生地点の地上気象データから推察したものであり、フェーンが白穂を引き起こしたことを三次元的な大気の流れの解析によって示した研究例はない。2018年8月7日に鳥海山の南西側で局所的(87.1 ha)な白穂被害が確認された。この白穂はフェーンによって引き起こされたのだろうか。また、なぜ局所的に白穂被害が発生したのだろうか。本研究は、数値シミュレーションを用いて白穂発生時の鳥海山周りでの三次元的で複雑な大気の流れを解析することで、これらの疑問を解明することを目的とする。数値シミュレーションにはWeather Research and Forecasting model (WRF) を用いた。被害地域周辺は水平格子間隔1 kmで計算された。シミュレーション結果から地上2 mでの蒸散強制力(FTP)を求め、夜間の FTP が30を超えた時間の積算によって白穂の発生リスクを評価した。WRFは、鳥海山の南西側で局所的に発生した白穂の位置と時刻を正確に再現した。具体的には、シミュレートされた夜間の FTP が被害地域でのみ継続的に30を超えた。その間、上空約1000 mの南東風が鳥海山にぶつかり、山の南側を迂回しながら被害地域に吹きおろしていた。つまり、被害地域では白穂発生時にフェーンが吹走しており、このフェーンによる高温(24℃以上)、強い風速(8 m s-1 以上)、低湿度(65%未満)が夜間の FTP を上昇させ、白穂を引き起こしたことが明らかになった。一方、鳥海山の南側に位置する庄内平野では、出羽山地から吹きおろすフェーンがシミュレートされた。このフェーンは、鳥海山の南西側で吹走したフェーンよりも低い高度から吹きおろしていたため、フェーン効果が弱かった。その結果、庄内平野では鳥海山の南西側と比べて高温低湿にならず、白穂が発生しなかった。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390291767753395584
  • DOI
    10.14866/ajg.2022s.0_113
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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