オランダ軍艦の航海日誌に基づいて推定した安政江戸台風の大きさ

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  • Size of typhoon hit Edo (former Tokyo) in 1856 estimated by ship logs of Dutch navy ship

抄録

<p>1. はじめに 江戸末期の1856年9月23日-24日に「安政江戸台風」が江戸付近を通過し、高潮が発生し多くの被害を出した。ただ、当時日本では広域の気象観測が行われておらず、台風の実態は被害規模から推定されていた。平野・財城(2020)は、日記に記録された風の情報をもとに台風経路を推定し、江戸の西側を北上する経路を辿ったため、大きな被害につながったと推定した(図1)。一方で、当時気象測器を積んだ欧米の艦船が日本近海にも数多く航行しており、オランダの軍艦Medusa号が安政江戸台風襲来時に関東近海を航行していたことがわかった。本研究ではMedusa号の航海日誌を入手し、記録された気象データを用いて安政江戸台風の上陸時の大きさを推定した。 </p><p>2.  データ  オランダ公文書館に所蔵されたオランダ軍艦Medusa号の航海日誌を入手し、1856年9月4日-30日の気象データをデジタル化した。比較に2011年-2019年に日本に上陸した台風に関する気象庁のデータを用いた。 </p><p>3.  結果 Medusa号が1856年9月18日-28日の航路と安政江戸台風の経路を図1に示す。Medusa号が観測した9月22日-25日の気象データの時系列を図2に示す。台風接近に伴って気圧が下がり、風向きが時計回りに転向し南風に変わると気温が上昇した。最も気圧が下がった9月24日0時は図1の星印に位置し、1000.0hPaを観測した。安政江戸台風がこの時刻に同じ緯度に位置したと仮定した場合、1000hPa半径は359kmと推定した。 日本に上陸した台風の上陸地点に最も近い気象台が1000hPaを下回った時刻から上陸までの時間差から1000hPa半径を推定した。安政江戸台風と似た経路の2019年東日本台風の1000hPa半径は666kmだった。2011年-2019年に日本に上陸した台風と比較すると、安政江戸台風は上陸時に特別大きかったわけではないことがわかった(図3)。今後はさらなる詳細な解析が必要である。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390291767761204736
  • DOI
    10.14866/ajg.2022s.0_152
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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