岡山県高梁川上流域周辺におけるNOxの二次物質

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タイトル別名
  • Secondary substances from NOx of the upper reaches of the Takahashi River, Okayama Prefecture

説明

<p>光化学スモッグ注意報は首都圏(1都7県)を中心に発令されるが、昨今はアジア大陸からの越境汚染によってオゾン(O3)濃度が高くなる場合がある。 2019年5月23日には、山陰地方の島根県および鳥取県において、観測史上初めて光化学スモッグ注意報が発令された(苗村ほか, 2021a)。光化学オキシダント(Ox)の大部分はO3である。窒素酸化物(NOx)から硝酸イオン(NO3)への酸化とO3の生成はほぼ同時に進行するため(佐々木ほか,1986)、NOxから二次物質としてO3とNO3の連動性は注目される。本研究では、高梁川上流域周辺におけるO3と渓流水中のNO3-濃度に着目した。対象とした岡山県高梁川は、延長111 km、流域面積2,670 km2の一級河川である。O3濃度については、大気常時観測測定局の新見市保健福祉センター東(東経133.4683度、北緯34.9733度、標高187 m)とし、2015年3月21日から3年間の1時間値を解析した。また、O3濃度の季節変動は太陽を中心として考えることがより解析しやすい(苗村・福岡,2017)。そこでO3濃度の変動は太陽黄経15度間隔の二十四節気別とした。渓流水中のNO3濃度は、高梁川源流域(東経133.4062度、北緯35.1707度、標高638 m、集水域1.02 km2)で2018年12月9日に採取し分析した。O3濃度については、3年間の全平均値は24.0 ppbとなった。これは同時期の首都圏の中心地・東京タワーの値である27.5 ppb(苗村ほか, 2021b)と較べて0.87倍となった。最高値は、2017年5月29日の17時および18時の99 ppbであった。次値については、2015年5月27日18時の98 ppbであった。鳥取県米子における同時期のO3濃度においても、最も高かった1時間値は2015年5月27日20時の110 ppbであり(苗村ほか, 2021b)、また三重県熊野においてもこの日は高く、熊野における後方流跡線解析でアジア大陸からの移流であると推測されている(苗村・奥田, 2021)。従って、この日は越境汚染の影響が広く日本へ影響を及ぼした可能性が高い。新見および東京タワーにおける二十四節気別のO3濃度を図に示した。新見では小満(5/21~6/5) から小暑(7/7~7/22)にかけて東京タワーよりも急激に低下する季節変動が見られた。また、小雪(11/22~12/6)から啓蟄(3/6~20)まではほぼ東京タワーと同じ上昇傾向が見られた。渓流水中のNO3濃度は5.68 mMであった。渓流水中のNO3濃度は、時間代表性があるが(楊, 2000)、この集水域はスギ・ヒノキ・サワラ植林が89.8%を占めた。森林生態系において窒素は制限要因であるが、大気沈着の影響および森林の植生や地質の影響を把握しながら、アジアからの越境汚染の影響考えていかねばならない。</p><p>参考文献</p><p>苗村晶彦, 福岡義隆 (2017): 太陽黄経による季節区分と大気環境の問題. 戸板女子短期大学研究年報, 60, 55-64. 苗村晶彦, 初山守, 奥田知明 (2021a): 降水中のNO3濃度が 低い四万十帯における渓流水質. 環境科学会誌, 34, 40-45. 苗村晶彦, 奥田知明 (2021): 世界文化遺産のフィールド―「紀伊山地の霊場と参詣道」に係わる自然環境について. 戸板女子短期大学研究年報, 64, 印刷中. 苗村晶彦, 齋藤圭, 奥田知明, 小寺浩二 (2021b): 源流と河口の環境―鳥取県加勢蛇川を事例として. 流域圏学会誌, 8, 2-9. 佐々木一敏, 栗田秀實, 村野健太郎, 水落元之, 植田洋匡(1986): 大気汚染物質の長距離輸送時における硫酸塩硝酸塩等の挙動.大気汚染学会誌,21, 216-225. 楊宗興 (2000): 陸水学の視野を広げる:陸域研究との相互作用. 陸水学雑誌, 61, 166-167.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390291767768857984
  • DOI
    10.14866/ajg.2022s.0_51
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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